2026年8月号|特集 浜田省吾

【Part8】第七章:[未来]2000年代②~Journey of a Songwriter~|浜田省吾ヒストリー1976-2026

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解説

2026.8.28

文/小川真一


【Part7】からの続き)

新しい出逢いと物語に向けて、旅を続けるソングライター


 「コロナ禍」という言葉が聞かれるようになったのは、2020年の春頃だったと記憶している。新型コロナウイルス感染症の流行は、社会全体を巻き込み、やがて日常生活のあり方そのものを大きく変えていった。音楽もまた、その渦中に置かれることになった。

 コンサートやライヴは次々と中止や延期を余儀なくされた。「3密」という言葉が提唱され、密閉、密集、密接の条件が重なる場所を避けることが呼びかけられた。人が集まり、同じ空間で音楽を共有するライヴは、その性質上、感染拡大のリスクと無縁ではいられなかった。ライヴという文化そのものが、その存続を問われることになったのである。

 ステージに立つミュージシャンにとっても、客席に足を運ぶファンにとっても、それまで日常の一部だった「音楽を聴きに行く」という行為が、突然、特別なものになった。それまで当たり前に存在していた音楽との接点が失われたことで、ライヴというものが、いかに日常のなかに深く根を張っていたのかを、あらためて思い知らされることになった。

 浜田省吾もまた、その影響を大きく受けた音楽家の一人である。

 浜田の音楽活動を考えるうえで、ライヴは欠かすことのできない要素だ。〈ON THE ROAD〉に象徴されるように、浜田は長年にわたってステージに立ち、観客とともに音楽を作り上げてきた。だからこそ、コロナ禍によってライヴが止まったことは、単にスケジュールの一部が失われたということではない。彼の音楽活動の根幹にあるものが、断ち切られたのである。

 この「止まった時間」は、浜田省吾にとっても大きな転換点となった。予定されていたファンクラブ・イベントは中止となり、計画されていたツアーも中止された。しかも、それは単純な延期ではなかった。先に進むことを前提として組み立てられていた〈ON THE ROAD〉の時間そのものが、突然、断ち切られたのである。

 この空白の時間に生まれた曲が、「この新しい朝に」だった。

 2021年3月13日に配信されたこの曲は、浜田にとって約6年ぶりの新曲となった。同時に公開されたプロモーション・ヴィデオでは、観客のいない大きなコンサート・ホールで、ひとりの浜田がギターを抱えて歌っている。赤いシートが目立つ客席に向かって、力強く歌いかけるその姿が映し出される。



浜田省吾「この新しい朝に」Music Video






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