2026年8月号|特集 浜田省吾
『誰がために鐘は鳴る』|浜田省吾アルバム②1990-2020
レビュー
2026.8.3
文/ドリーミー刑事

浜田省吾
『誰がために鐘は鳴る』
1990年6月21日発売
01. MY OLD 50'S GUITAR
02. BASEBALL KID'S ROCK
03. 少年の心
04. 青の時間
05. サイドシートの影
06. 恋は賭け事
07. 夜は優し
08. SAME OLD ROCK'N'ROLL
09. 太陽の下へ
10. 詩人の鐘
11. 夏の終り
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人生の折り返し地点が見え始めた世代が、ロックを鳴らし続ける決意表明
前作から約2年半のインターバルを経て発表された12作目。アルバムは「MY OLD 50’S GUITAR」の空気を切り裂くようなハードエッジなギターで幕を開けるが、そこで歌われるのは、自殺願望にも似た虚無を抱えた男の姿だ。続くオーセンティックなロックンロール「BASEBALL KID’S ROCK」は、野球讃歌であると同時に、少年時代の夢を捨てきれない男の自画像のようにも聴こえる。
浜田は当時30代後半。人生の折り返し地点が見え始めた世代にとって、ロックスターであり続けることは決して当たり前ではなかった。引退が頭をよぎるベテラン選手の姿に、先の見えないミュージシャン人生を歩む自身を重ね合わせていたのかもしれない。
本作の白眉は、続く「少年の心」「青の時間」「サイドシートの影」が組曲のように連なる流れだ。失われたものを噛み締め、心の傷を確かめながら、喪失の先にある再生へと歩み出そうとする男の姿が、叙情豊かな風景の中に描かれていく。浜田のヴォーカルを際立たせながら、最小限の音数で演奏のダイナミズムと繊細な感情の機微を引き出した梁邦彦のアレンジも見事。その余韻を振り払うように鳴り響く「SAME OLD ROCK’N’ROLL」では、「やりたいからやる」という吹っ切れた覚悟が痛快なロックンロールとして結実し、ラストの「詩人の鐘」は、バブル崩壊を予感させる時代の空気の中で、それでもロックを鳴らし続けるという決意表明のように響く。
浜田省吾オフィシャルWebサイト : https://shogo.r-s.co.jp/
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