2026年8月号|特集 浜田省吾
【Part1】浜田省吾2026|ドキュメント:50周年アニヴァーサリー・イヤー
レポート
2026.8.3
文/兼田達矢

2025年から始動したSHOGO HAMADA 50th Anniversary Vinyl Collection
昨年4月23日、浜田省吾ソロ・デビュー50周年企画第一弾として、アナログB面コレクション、その名も『B面に恋をして』がリリースされた。リリース当時アナログ・シングルのB面でしか聴くことができなかった貴重な音源を4枚の7インチ・アナログ盤にまとめ、さらに〈ON THE ROAD 2023 Welcome Back to The Rock Show youth in the “JUKEBOX”〉ツアーのオープニング映像にも使用された、アルバム『My First Love』のタイトル曲「初恋」を収めたボーナス・ディスクを加えた5枚組。ジャケットに記された『B YOUR SIDE』という英題は「B、あなたはこっちでしょ」とでも訳すべき、いかにもマニアックなファン心理をくすぐる内容と仕様だった。

浜田省吾
「B面に恋をして」
2025年4月23日発売

AIDO
「二人の夏/恋の西武新宿線」
2025年5月7日発売
この企画は、SHOGO HAMADA 50th Anniversary Vinyl Collectionとして5月7日に「二人の夏/恋の西武新宿線」の7インチ・アナログ盤のリリースが続き、7月23日には前年に行われたファンクラブ・ツアーで演奏された楽曲を数多く含む2枚のオリジナル・アルバム『誰がために鐘は鳴る』『その永遠の一秒に』が、10月22日には同じく前年のファンクラブ・ツアーでピックアップされた楽曲を含む『FATHER’S SON』と初アナログ化となる『SAVE OUR SHIP』が、そして年明け1月21日に『Sand Castle』『Wasted Tears』『Edge of the Knife』『初秋』というバラード・セレクション・アルバム4作がアナログ盤で一挙リリースといった具合に、現在も進行中。その詳細は特設サイトを確認していただくとして、そもそもこの企画は浜田の所属事務所Road & Skyの代表、髙橋信彦の発案で実現した。
「もともと私は、全カタログをアナログで再構築したいという思いからこのプロジェクトを提案しました。CDからストリーミングの時代を経て、今あえてアナログで作品と向き合う時間の豊かさを提案したかったんです」(「特別鼎談:試行錯誤した原点は名盤に 『生まれたところを遠く離れて』で辿る浜田省吾の実像」THE FIRST TIMES)
そして、「B面に恋をして」のインナーには、この50年の間に音楽を聴くメディアや環境が大きく変化したことを指摘した上で、「当時の空気感を感じながらゆったりと遠いあの頃に思いを馳せていただけたら幸いです」と綴っている。
もっとも、変化したのは音楽を提供する側だけでなく、受け取る側の話でもある。例えば、浜田省吾の音楽を初めて聴いた時は一人きりだった少年、あるいは少女がやがて恋人と一緒に聴くようになる。その後、配偶者を得た人もいるだろうが、その配偶者はかつて浜田の音楽を一緒に聴いた恋人の場合もあるだろうし、別人の場合もあるだろう。そして、仕事の現場で成功したり失敗したり、あるいは子育てで喜んだり悲しんだりした時間をくぐり抜け、今また浜田の音楽を聴いているというのは、冷静に考えてみれば、けっこうすごいことだ。それは、浜田の音楽に「当時の空気感を感じ」ることができる何か、「遠いあの頃に思いを馳せ」ることができる何かがあり、同時に今という時代を生きている心を動かす何かがあるからだろう。

浜田省吾
『生まれたところを遠く離れて(2026 Remix Version)』
2026年4月21日発売

浜田省吾
『LOVE TRAIN(2026 Remix Version)』
2026年4月21日発売
今年4月21日、ソロ・デビューからちょうど50年目となるその日には、1stアルバム『生まれたところを遠く離れて』と2ndアルバム『LOVE TRAIN』がリミックスされた音源がアナログ盤でリリースされ、同じ4月21日に『生まれたところを遠く離れて』のリミックス音源が50周年スペシャル・パッケージでCDでもリリースされた。
ここで、誰もが思う疑問が浮かび上がる。
なぜ、この2枚はリミックス音源なのか?
50周年スペシャル・パッケージCDに収められた田家秀樹の長大なライナーノーツの中で、高橋はこう答えている。
「僕はそのままでもいいと思ったんですけど、浜田は一枚目、二枚目はちょっと考えさせてくれ、やり直したいって。多分、他のアルバムでもそういう気持ちはあるかもしれない。でもキリがなくなりますよね。そういうことも全部わかった上で一枚目と二枚目はやり直したいと言ったんでしょう」

浜田省吾
『生まれたところを遠く離れて(2026 REMIX VERSION)』
2026年4月21日発売
リミックスは、近年の浜田の作品でメイン・エンジニアを務め、ライブ・テイクのミキシングも手がけている野口素弘が担当した。そのリミックス音源を聴いた浜田の盟友、町支寛二は「リミックスには驚きましたね。びっくりしましたよ」と語り(50周年スペシャル・パッケージCDライナーノーツより)、浜田自身もファンクラブ会報誌「ROAD&SKY」で「全然印象が変わるくらい音がいい」と話している。
というわけで、4月26日、その音を体感するイベントが開催された。〈浜田省吾ソロデビュー50周年記念トークイベント〜この日限りのライナーノーツ〉と題してHMV record shop渋谷で行われたこのイベントは、レーザーターンテーブル(レコード盤の溝を針ではなくレーザー光で読み取って再生するレコードプレーヤー)で『生まれたところを遠く離れて』のリミックス音源を6曲ピックアップして再生しながら、田家秀樹がその聴きどころや背景を解説していくという趣向。レーザーターンテーブルを提供したエルプ社の竹内孝幸も浜田の音楽を長く聴いてきたひとりだ。

レーザーターンテーブルを提供した竹内孝幸さん(株式会社エルプ)
「僕は高校生のときに通学中イヤホンを通して〈君が人生の時…〉を聴いて、こんなに素敵なメロディを書くアーティストがいるんだ、というのが出会いです。西武線沿線に住んでいたのでAIDOの〈恋の西武新宿線〉は我がまちの歌みたいな感じで、そこから入っていって。その後レコードを買い集めるなかで、特にインパクトが大きかったのが田家さんと同じく〈路地裏の少年〉でした」(「特別鼎談:試行錯誤した原点は名盤に 『生まれたところを遠く離れて』で辿る浜田省吾の実像」THE FIRST TIMES)

HMV record shop 渋谷のイベントに出演した音楽評論家、田家秀樹さん
この日のイベントも、その「路地裏の少年」から始まり、田家がライナーノーツに「イントロだけで何が始まったのかと思った。正直に言えば面食らった」と書いた重心の低い濃密な音が会場の空気を圧していく。「ライブ会場にいるかのよう」と田家が評した音像に加えて、解像度の高い音の一つひとつがそこに込められた浜田の思いをリアルに感じさせ、それはとても生々しい体験だった。言い換えれば、「浜田省吾22歳の肖像画がここにあります」という田家の言葉の通り、デビュー当時の浜田省吾に出会う機会になったかもしれない。

〈浜田省吾ソロデビュー50周年記念トークイベント〜この日限りのライナーノーツ〉より
「このアルバムをオンタイムで聴いた人はいますか?」という田家の問いに手を挙げる人はいなかったが、この日の聴衆一人ひとりのこのアルバムにまつわる追憶もリミックス、つまり少し書き換えられるようなことがあっただろうか? それはともかく、イベントの最後に「リミックスを提案して、こういう経験をさせてくれた高橋さんに感謝ですね」と田家が話すと、客席から拍手が沸き起こった。高橋が願った、アナログで浜田のアルバムと向き合うことを通して豊かな時間を過ごした人が確かにいたということだろう。その高橋も客席後方でイベントを見守っていたが、終演後には会場の片隅にあったジュークボックスに収められた曲のラインナップをチェックしていたのが印象的だった。

〈SHOGO HAMADA 50th Anniversary Gallery by Teruhisa Tajima〉より

HMV record shop渋谷内2Fギャラリースペースにて開催されたスペシャル展示
ちなみに、このHMV record shop渋谷の2階ギャラリー・スペースでは、このイベントより早く21日から5月6日まで、アート・ディレクター/デザイナーの田島照久が手がけた浜田作品のジャケット・アートワークが展示されていた。作品ごとに浜田とのやり取りや制作の苦労などを簡潔にまとめた田島のコメントが添えられていて、例えば「……、カリフォルニアを縦に走る国道五号線を撮影していた写真だった。それに浜田省吾武道館公演のステージライトを合成すると“ON THE ROAD”の普遍のテーマが出現したのだ」という一節を読むと、そこからまたイメージが膨らんでいき、1枚の絵が立体的に見えたり、自分だけの記憶の中の映像とシンクロしたりしながら、自然と浜田音楽が脳内再生される。そこは六畳間ほどの小さなスペースだったが、ファンにとっては豊かな時間を過ごすことができる特別な空間だったに違いない。
(【Part2】に続く)

アルバム『ON THE ROAD』アートワーク
浜田省吾オフィシャルWebサイト : https://shogo.r-s.co.jp/
浜田省吾公式アカウント :
https://www.youtube.com/user/shogohamadaSMEJ
https://x.com/ShogoHamadaInfo
https://page.line.me/625wbplj?openQrModal=true
https://www.facebook.com/ShogoHamada.Official/
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【Part2】浜田省吾2026|ドキュメント:50周年アニヴァーサリーイヤー
レポート
2026.8.7
