連載|伊波真人のシティポップ短歌

今月のお題「伊藤美奈子 / 誘魚灯」

2026.7.15

今月のお題

伊藤美奈子 / 誘魚灯1984年


淡いブルーの雪原にたたずむ物悲しい表情の女性。このアートワークが物語る通りの、アンニュイ系シティポップの傑作。自宅でひっそりとピアノを弾きながらテープレコーダーに録音していた自作曲がレコード会社関係者の耳に留まり、デビューのきっかけをつかんだ伊藤美奈子。彼女がCBS/SONYに残した3枚のアルバムの2作目が本作である。松任谷正隆が全曲のアレンジとサウンド・プロデュースを手掛け、錚々たるミュージシャンが多数参加。メロウなアルバム・タイトル曲や、シティポップ文脈で再評価されている「デリンジャー」など、アルバム全編を貫く浮遊感は格別だ。

水際に揺れるひかりを見つめてた 去りゆくものと知っていたから水際に揺れるひかりを見つめてた 去りゆくものと知っていたから




伊波真人(いなみ・まさと)

歌人。1984年、群馬県高崎市生まれ。早稲田大学在学中に短歌の創作をはじめる。2013年、「冬の星図」により角川短歌賞受賞。雑誌、新聞を中心に短歌、エッセイ、コラムなどを寄稿。ポップスの作詞家としても活動中。ラジオ、トークイベントへの出演なども行う。音楽への親しみが深く、特にシティポップ、AORの愛好家として知られる。著書に、歌集『ナイトフライト』など。2026年6月に第二歌集『ブルーアワー』を刊行。本連載をまとめた書籍『シティポップ短歌』(遊泳舎)も好評発売中。

『シティポップ短歌』