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【Part2】制作スタッフが語る岡村靖幸ミュージックビデオの“裏側”と“真実”!

2026.7.17

インタビュー・文/安川達也(ウェブマガジンotonano編集部)



(【Part1】からの続き)


「Punch↑」はペンキの匂いを想い出しますね(笑)(塩坂)


―― 岡村靖幸さんのデビュー40周年を記念して、EPIC期のミュージックビデオが順次公開中です。7月10日には第2弾として「いじわる」「聖書(バイブル)」「Punch↑」「友人のふり」「Vegetable」の5タイトルが公開されました。さて、この当時の塩坂さんのお仕事は?

塩坂 すべて(坂西)伊作さんの監督作品で、僕はADです。前回(Part1)でお話しした「19(nineteen)」での初仕事の次が「いじわる」でした。同じセカンド・アルバム『DATE』(’88年3月発売)の収録曲で、僕がADとして最初から関わった岡村くんの作品になりますね。と言っても、まだいちばん下っ端ADですからスタッフのお弁当の手配をしたり、岡村くんにすーっと水を出したりしてね。「あれシオちゃん、この水、ちょっとぬるくない?」って突っ込まれたりしてね(笑)。そんな想い出がありますね。





―― 「いじわる」のなかに出てくるダンサーたちは、前回教えてくれた「だいすき」キャスティングのように塩坂さんが選ばれたのではないのですか?

塩坂 あ、ここに出てくるダンサーさんたちは全員伊作さんとKONDI(近藤宣幸さん当時AD)のブッキングですね。この頃、伊作さんとコンディはよくディスコやクラブに通っていたんですよ。おそらくブラックミュージックの最先端現場の調査……いや単純にプライベートで遊んでたのかな(笑)。そこで知り合った仲間たちのなかで踊れる女の子やそのお友達に声をかけて、岡村くんのビデオにも出演してもらっていましたね。「いじわる」は♪ヒップにしゃがんで♪職場はディスコって歌っていますから、伊作さんのなかにはキャスティングも含めビジュアルイメージがしっかりあって、岡村くんもそれに呼応した感じだったと思います。






―― 次が「聖書(バイブル)」 (7thシングル/’88年9月発売)のミュージックビデオですね。

塩坂 リリースとしては『DATE』からの「イケナイコトカイ」「SUPER GIRL」のリカットから半年ぶりの新曲だったはずです。MVではいわゆるシングル・ヴァージョンの音源を使っています。覚えているのはMV撮影の前段階に、青山スタジオで岡村くん本人とバンドメンバーのスチール撮影を行って等身大パネルを制作したことですね。伊作さんからの指示で本人用が3ポーズ、バックコーラスの女性2パネル、演奏メンバー用4パネルの計9個のパネルを発注しましたねー。後日そのパネルを並べてIMAGE STUDIO 109目黒のM1で本番撮影でした。

―― ネオンも印象的なのですが。

塩坂 ネオンも発注しました! 80年代バブル期の時代といえば時代ですが、当時伊作さんの中ではネオン・ブームだったんですよ(笑)。この頃に他のアーティストにもネオン効果は多用していましたね。そういう装飾は自分が用意している時はまだ完成形は見えていないのですが、編集過程で自分のやったことが映像化されていくのが楽しかったですね。少しずつですが、岡村くんのビデオに関わりながら映像制作の仕事を覚えていったころです。






―― 塩坂さんが岡村さん作品に関わった順番だと次が先日話題になった「だいすき」(8thシングル/’88年11月発売)ですね。シングルだと次は「ラブ タンバリン」(9thシングル/’89年4月発売)なのですがMVは制作されなかった……?

塩坂 言われてみればそうなんですよね。それこそアルバム『靖幸』(3rdアルバム/’89年7月発売)からは収録曲の半分の5曲のMVが作られているわけで、収録曲でかつシングルの「ラブ タンバリン」も普通に考えればMVは存在するはずですよね。どうして作られなかったのかは明確には記憶していないのですが、岡村くんと伊作さんのなかでは通じるものがあったはずなので、直観的に次の映像化として「Punch↑」が選ばれたということなんでしょうね。

―― 「聖書(バイブル)」「だいすき」「Punch↑」「友人のふり」「Vegetable」が『靖幸』からの5クリップですね。人気の「Punch↑」もまた印象的なビデオでしたね。

塩坂 「Punch↑」はペンキの匂いを想い出します(笑)。スタジオの白ホリにペンキを垂らしてゆくという斬新なアイデアで!レギュラーで使用していたIMAGE STUDIO 109目黒が撮影条件的に使用することができなかったんです。絵コンテの段階からすでに危険な香りというか、シンナーの匂いというか(笑)。都内のスタジオを探して、最終的に映画やドラマで有名な大映スタジオで撮影することになりました。大きなトラブルもなく無事に撮影を終えた……はずです。






―― 「Punch↑」の音源で台詞参加している俳優の金山一彦さんが出演しているビデオがこの次の「友人のふり」(10thシングル/’89年12月発売)ですね。

塩坂 シングル発売と同じ時期に公開された映画『Peach どんなことをしてほしいのぼくに』(’89年12月公開/監督:坂西伊作/音楽・主演:岡村靖幸)からのシーンで構成されたビデオですね。映画では僕が助監督をしていた経緯もあったので「友人のふり」の編集は「オマエが適任だろう」って伊作さんから任されたんです。






―― 2年目にしてADからエディターにステップアップですね。

塩坂 ビックリしましたが、やっぱり嬉しかったですよ。映画の制作&助監督が初めての経験でしたから本当に大変で初めて死ぬかと思ったので……あ、映画はまた別の機会があれば話しますが(笑)、なんか色んな想いがこみ上げてくるなかで「友人のふり」のビデオも編集しましたね。

―― 映画は80年代後半から90年代初頭の空気感が漂うスタイリッシュかつリアルな映像美が特徴でした。そもそも次に発表する「Vegetable」のビデオが映画にも影響しているのではないかというお話しも聞いたことがあるのですが。

塩坂 この時期は制作が前後入り組んでいたと思うので時系列は定かじゃないのですが、現場視点からそうだったんじゃないか、って記憶はあるんですよね。ストリート系の感じとかね。この「Vegetable」の撮影はラグタイムな雰囲気に合わせてロカビリーファッションの聖地、青山のピンクドラゴンですね。いま見ても現場での楽しさが伝わってきますねー。出演している仲間役のキャストも、さっきお話したクラブでの繋がりで、この時期に岡村くんのビデオを連続して見ると同じ女の子が出演していたりしていてね。気づいていたファンもいたんじゃないですかね。(映像を見ながら)ほら、勢いあまってビリヤード台に乗っちゃうし、台ごと動かしちゃって、店の人にけっこう怒られたなぁ。






―― 誰が?

塩坂 だいたい怒られるのはADの僕らの役目です(笑)。お店の前のシーンでも伊作さんが「道路濡らして!」って言うんで、我々ADが水を撒く訳です。「Vegetable」もそうなんですが、岡村くんがミュージックビデオ撮影の時間をすごく楽しんでくれたので、その空気をパッケージした状態でいまこうやってみんなでシェアできるのは本当に嬉しいですね。


(【Part3】へ続く)




塩坂芳樹(しおさか・よしき)
●1987年11月株式会社EPIC・ソニー(当時)入社。2024年3月退社までソニーミュージックに36年5か月勤務。岡村靖幸をはじめ、真心ブラザーズ、電気グルーヴ、TOKIO、杏子、BO GUMBOSら数多くのミュージックビデオやセルビデオをディレクター、プロデューサーを務める。

<岡村靖幸の主な映像仕事歴>
・MV「19(nineteen)」 ’88|アシスタント・ディレクター
・MV「いじわる」 ’88|アシスタント・ディレクター
・MV「いじわる(『eZ Christmas Special Version』)’88|アシスタント・ディレクター
・MV「聖書(バイブル)」 ’88|アシスタント・ディレクター
・MV「だいすき」 ’88|アシスタント・ディレクター
・MV「Punch↑」 ’89|アシスタント・ディレクター
・MV「Vegetable」 ’89|アシスタント・ディレクター
・映画『Peach どんなことをしてほしいのぼくに』 助監督(’89劇場公開|監督:坂西伊作)
・MV「友人のふり」 ’89|編集ディレクター
・MV「Peach Time(Video Clip Version)」 ’90|アシスタント・ディレクター
・MV「Peach Time(Complete Version)」 ’90|アシスタント・ディレクター
・TV SPOT「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」 ’90|アシスタント・ディレクター
・セルビデオ『LIVE家庭教師’91』 ’91|ディレクター
・セルビデオ『ファンシーゲリラ VIDEO SHOP '92』 ’93|ディレクター
・MV「Peach X’mas」 ’95|ディレクター
・MV「ハレンチ」 ’96|ディレクター
・セルビデオ『20世紀と伝説と青春』 ’12|ディレクター ほか