2026年7月号|特集 渡辺美里
①eyes|渡辺美里 全オリジナル・アルバム
レビュー
2026.7.1
文/油納将志

渡辺美里
『eyes』
1985年10月2日発売
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01. SOMEWHERE
02. GROWIN’ UP
03. すべて君のため
04. 18才のライブ
05. 悲しいボーイフレンド
06. eyes
07. 死んでるみたいに生きたくない
08. 追いかけてRAINBOW
09. Lazy Crazy Blueberry Pie
10. きみに会えて
11. Bye Bye Yesterday
90年代ポップを先取りした歴史的ドキュメント
この『eyes』は、歌謡曲とニューミュージックが混在した過渡期の邦楽シーンにおいて、洋楽直系の最先端サウンドを提示した音楽的マイルストーンである。本作の白眉は、当時ブレイク前夜の瑞々しい才能であった小室哲哉、岡村靖幸、大江千里、そして木根尚登ら若きコンポーザー陣の起用だ。小室が持ち込んだ「死んでるみたいに生きたくない」における先鋭的なシンセ・ポップ構造や、木根が表題曲「eyes」で見せたメロディアスな素養など、彼らの洋楽的なセンスは、当時の12インチ・シングルのカルチャーやエレクトロ・ポップの潮流をドメスティックな歌謡空間にみごとに着地させている。
この精緻に構築されたデジタル・トラック群に対峙するのが、当時10代だった渡辺の圧倒的なヴォーカルだ。ケニー・ロギンスのカヴァーであるデビュー曲「I’m Free」を聴けば明白なように、彼女の歌声は単に高音が出るだけでなく、地声の力強い響きと、言葉の頭を明瞭に発音するアタックの強さを備えていた。チープな打ち込みに陥りがちだった黎明期のシンセ・サウンドが、彼女の血の通った、焦燥感を孕んだ声量が注入されることで、スケールの大きなスタジアム・ロックの鳴りへとビルドアップされている。
後藤次利や西本明、清水信之らが手がけたエッジの効いたアレンジメントも含め、本作は80年代半ばの音響的実験がハイレベルで結実した一作だ。気鋭の作家陣によるソングライティングの妙と、新人の天性の声帯が稀有な化学反応を起こした本作は、後にJ-POPと呼ばれることになる90年代ポップ・ミュージックのプロダクションを先取りした、構造的にも極めて価値の高い歴史的ドキュメントと言っていい。
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②Lovin’ you|渡辺美里 全オリジナル・アルバム
レビュー
2026.7.2