2026年7月号|特集 渡辺美里

第1回:岡村靖幸|渡辺美里を支えたメロディメイカーたち

コラム

2026.7.1

文/小川真一


第1回:岡村靖幸


 渡辺美里と岡村靖幸の関係は、単なる楽曲提供者とシンガーという関係では語り尽くせない。互いを深く理解し合い、ときにライバルとして刺激を与えながら、ともに時代を切り拓いてきた。盟友という言葉こそ、この二人の関係を最も的確に表している。

 美里は’85年5月2日、岡村靖幸は同年12月1日にデビューし、ほぼ同期のアーティストであった。所属レーベルも同じEPIC・ソニーだったこともあり、デビュー当初からプロモーションやレコード会社のイベントなど、多くの場で共演を重ねていた。

 それだけではない。岡村靖幸のデビューのきっかけには、美里との出会いが大きく関わっている。美里のレコーディングにコーラスとして参加した際、スタジオの中で踊っていた姿がスタッフの目に留まり、その強烈な存在感がデビューへの道を切り開いたのは、あまりにも有名なエピソードだ。

 そのレコーディングが行われたのが、美里の’85年発表のデビュー作『eyes』だ。このアルバムで岡村は、「GROWIN’ UP」「すべて君のため」「Lazy Crazy Blueberry Pie」「Bye Bye Yesterday」の4曲を提供した。全11曲中4曲を手掛けたことからも、岡村の楽曲に対する期待が大きかったことがうかがえる。

 4曲とも初期の美里を語るうえで欠かせない曲ばかりだが、とりわけ「GROWIN’ UP」は、デビュー・シングルがケニー・ロギンスの楽曲の日本語カヴァーだったこともあり(B面もエイジアのカヴァー)、彼女にとって初めてのオリジナル曲によるシングルとなった。

 当時19歳だった岡村靖幸にとって、「GROWIN’ UP」は初めて世に送り出した提供曲でもあった。その熱気と野心は、楽曲の隅々にまで満ちあふれている。ステージをエネルギッシュに駆け回る明るく健康的な渡辺美里のイメージを決定づけた一曲であり、同時にソングライター・岡村靖幸の才能を世に知らしめる第一歩ともなった。二人がともに歩み始めた、その記念碑的な作品なのだ。

 美里と岡村のコラボレートは続き、’86年のセカンド・アルバムの『Lovin’ you』では8曲を提供した。その中の「Long Night」は、作詞渡辺美里、作曲岡村靖幸と、二人の共作曲となった。清々しい疾走感を持ったこの曲はシングル・カットされチャートの11位を記録。コラボ作品としては最初のビッグ・ヒットとなった。

 ロッキン・チューンの「19才の秘かな欲望」での美里の歌いっぷりは、すでに堂々としていて貫禄すら感じさせる。この曲は後に岡村自身もシングル「イケナイコトカイ」のカップリング曲としてセルフ・カヴァーしているが、ヘヴィー度数では美里版のほうが高く感じられるほどだ。

 おなじく共作曲の「みつめていたい (Restin’ In Your Room)」のサビでは、作者である岡村靖幸の歌声もしっかりと聞こえてくる。この若さゆえの情熱と才能のぶつかりあいこそが、渡辺美里と岡村靖幸という稀有な関係を生み出し、日本のポップス史に残る名コンビの原点となったのである。



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