2026年3月号|特集 日本シンセサイザー音楽の曙

【Part2】日本シンセサイザー音楽ヒストリー

会員限定

解説

2026.3.9

文/小暮秀夫


(【Part1】からの続き)

Part2:日本シンセサイザー音楽発展期


 1970年代、日本でシンセサイザーが「新しい楽器」として一般に知られ始めた頃、お茶の間の空気はどこかざわついていた。’73年のオイルショックや公害問題の深刻化によって、「科学技術の進歩は明るい未来をもたらす」という60年代の楽観的なヴィジョンは大きく揺らぎ始める。ようやく人々は戦後の高度経済成長の影の部分に気づき始めたのだ。

 その気分を象徴したのが、’73年に刊行された五島勉のベストセラー『ノストラダムスの大予言』である。「一九九九年、七の月 空から恐怖の大王が降ってくるだろう」という人類滅亡の予言は、子供たちの心に大きな爪痕を残した。翌’74年には、日本テレビの番組「木曜スペシャル」に出演したユリ・ゲラーがスプーンを曲げ、超能力ブームが爆発する。雑誌やテレビではUFO、宇宙人、心霊写真、超常現象、超古代文明、ツチノコ、ネッシーといった未知なるものがクローズアップされ、’79年にはオカルト情報誌『ムー』が創刊される。70年代は、まさに“オカルト全盛”の時代だった。

 実際、レコードの企画には時代の空気が敏感に反映される。UFOに関する資料や証言で構成されたドキュメント・レコード『衝撃のUFO』(’73年)、冨田勲が音楽を手掛けた映画『ノストラダムスの大予言』のサントラ(’74年)、松武秀樹がシンセサイザーを担当した『ピラミッド・パワー/瞑想』(’78年)、同名雑誌と連動したKAMIYA(神谷重徳)の『ムー』(‘80年)などなど。未知のものを語るには、シンセサイザーの「未知の音」が必要だったのだ。


冨田勲
「ノストラダムスの大予言」

1974年発売


KAMIYA(神谷重徳)
『ムー』

1980年発売





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