連載|伊波真人のシティポップ短歌

今月のお題「太田裕美 / こけてぃっしゅ」

2025.8.15

今月のお題

太田裕美/ こけてぃっしゅ1977年


まぶしい陽光と真っ白な夏の装い。それまでは歌謡曲やフォークのようなイメージだった太田裕美が、一気にシティ感覚にシフトチェンジした6枚目のオリジナル・アルバム。その象徴的な一曲が先行シングルの「恋愛遊戯」。軽快なリズムに乗せたボサノヴァ・タッチのサウンドが、彼女の爽快な一面を引き出した。全曲の作詞は松本隆、作曲は筒美京平、ほぼ全曲のアレンジを萩田光雄が手掛けている。全体的に、ウェストコースト・ロックやAORのテイストが濃厚であるのと同時に、「夏風通信」や「レインボー・シティー・ライト」といったタイトルや歌詞に都会的なセンスを感じられる。

水彩の絵具が滲みゆくような 君との夏がただ過ぎていく水彩の絵具が滲みゆくような 君との夏がただ過ぎていく



伊波真人(いなみ・まさと)

歌人。1984年、群馬県高崎市生まれ。早稲田大学在学中に短歌の創作をはじめる。2013年、「冬の星図」により角川短歌賞受賞。雑誌、新聞を中心に短歌、エッセイ、コラムなどを寄稿。ポップスの作詞家としても活動中。ラジオ、トークイベントへの出演なども行う。音楽への親しみが深く、特にシティポップ、AORの愛好家として知られる。著書に、歌集『ナイトフライト』などがある。