2025年6月号|特集 ジャパニーズ・フュージョン

【Part3】 栗本斉 『CROSSOVER CITY』シリーズ企画・監修・選曲・解説

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インタビュー

2025.6.19

インタビュー・文/真鍋新一 写真/山本佳代子


【Part2】からの続き)

ミュージシャンとエンジニアが高いレベルに達していた時期だからこそフュージョンのような音楽が生まれたんだと思います(栗本)


── では、あらためて選曲の基準や曲順へのこだわりについてもう少し深く伺っていきます。全部で5タイトル分の選曲をされるのは、リサーチをして候補を集めたりする段階も含めてやはり大変だったかと思います。各レコード会社のレーベルのカラーなども考えながらという話が最初にありましたが、それ以外に念頭に置かれていたことはありますか?

栗本斉 僕がやっているすべての仕事の根本にあることなのですが、まずは「固定観念にとらわれないこと」というのが常にありますね。つまり、「すべての音楽を平等に扱うこと」。有名な曲が入っていてもいいし、逆にすごくマイナーな曲でも、雰囲気が合うもの同士であればそこは迷わずに混ぜる。

── 大事なのはアーティストが有名か無名かではなく、あくまでも音楽そのもの、ということですよね。知名度に関係なく並列にならべることによって、本当にその並び、その選曲でふさわしいのかどうかをきっと聴く人それぞれが判断して、楽曲を再評価することにつながっていくと思います。

栗本斉 僕の場合は「シティポップ感のある音楽」という視点で楽曲を見直していくということで、今回に限らず、そんな基本的ポリシーで選曲をしています。ただ、これは語弊があるのでうまく説明できないのですが、本当に「シティポップの王道」的なものを選ぶとしたら、今回のような選曲にはならなかったかもしれないんですよ。

── と、言いますと?

栗本斉 いわゆるフィーチャリング・ヴォーカルの楽曲、「歌モノ」を外したことです。例えばNORIKI(野力奏一のプロジェクト)のアルバムで国分友里恵さんが歌っているとか(「YOU NEED ME」など)。

── 松岡直也さんと吉田美奈子さんの「Lovin’ Mighty Fire」のような?

栗本斉 そうそう。もちろんコーラスが歌のパートを長めに歌う曲もあるにはあるんですが、あくまでもサウンドの一部として聴けるようなものを選んでいます。ただ、完全に歌詞のある歌モノになるとフュージョンというよりもシティポップそのものになってしまいそうだったので、そこは一旦置いておこう、ということにしました。


── 前回(Part2)のお話にあった”フィメール・ジャズ”のように、フュージョンというジャンルの中で、敢えて歌モノに近いものを掘り起こして評価しようという流れも確かにありますよね。でもあまり歌が目立つと「フュージョンの楽曲を集めました」というポリシーは確かに薄まる感じはします。

栗本斉 あとはなんと言いますか、ひとつの楽器のパートだけが異様に突出したような楽曲。洋楽で言うとアル・ディ・メオラやジョン・マクラフリン的な、メインのギターの音がやたらと大きくミックスされているようなものも外しました。あくまでも全体のアレンジやサウンドの面白さにちゃんと着目して聴いてほしいので。

── あぁ、スター・プレイヤーの作品だと、主役の楽器の主張が強いミックスになることもありますよね。




栗本斉 (くりもとひとし)
音楽と旅のライター、選曲家。1970年生まれ、大阪出身。レコード会社勤務時代より音楽ライターとして執筆活動を開始。退社後は2年間中南米を放浪し、帰国後はフリーランスで雑誌やウェブでの執筆、ラジオや機内放送の構成選曲などを行う。開業直後のビルボードライブで約5年間ブッキングマネージャーを務めた後、再びフリーランスで活動。著書に『ブエノスアイレス 雑貨と文化の旅手帖』(毎日コミュニケーションズ)、『アルゼンチン音楽手帖』(DU BOOKS)、共著に『喫茶ロック』(ソニー・マガジンズ)、『Light Mellow 和モノ Special』(ラトルズ)などがある。2022年2月に上梓した『「シティポップの基本」がこの100枚でわかる!』(星海社新書)が話題を呼び、各種メディアにも出演している。近著は2023年刊行の『「90年代J-POPの基本」がこの100枚でわかる!』(星海社新書)。『CITY POP STORY 〜 Urban & Ocean』(2023年)、『CITY POP GROOVY ’90s -Girls & Boys-』(2024年)、『CITY POP STORIES -’70s & ’80s-』(2024年)、『CROSSOVER CITY』シリーズ(2025年)など数多くのコンピレーション・アルバムの監修・企画・選曲・解説を手がけている。