2025年6月号|特集 ジャパニーズ・フュージョン
【Part2】安藤正容(元T-SQUARE)が語るジャパニーズ・フュージョン
インタビュー
2025.6.9
インタビュー・文/細川真平

(【Part1】からの続き)
ダイレクト・カッティングは緊張感がたまらないライヴ盤みたいな感じですね(笑)
── THE SQUAREは1978年9月21日に、アルバム『Lucky Summer Lady』でデビューされました。これはどういうきっかけだったのでしょうか?
安藤正容 伊藤八十八(いとうやそはち/※1)さんがちょうどCBS・ソニーに移ったころで、八十八さんにスカウトされたというか、八十八さんに「レコードを出さない?」って声を掛けていただいて、それでデビューできたんです。
── 八十八さんは、THE SQUAREをライヴで観て気に入られたんですか?
安藤正容 そうですね。学生のときにやってた僕らのライヴをご覧になって、「やりませんか?」と声を掛けくださった感じです。
── そのとき、八十八さんとはバンドの方向性だったり、ファースト・アルバムの方向性みたいなところについて、まずはどういうお話をされたのですか? “これからはフュージョンの時代だ”というふうに八十八さんは考えられていたのかなと思うのですが、そのあたりについては、安藤さんやTHE SQUAREのメンバーとお話しはされたのでしょうか?
安藤正容 最初のアルバムについては、「全部カヴァーでやろう」みたいなことを言われましたね。でも、「せっかくオリジナルがあるから、それは嫌です」って言って(笑)。1曲だけカーペンターズの曲だったかな(「愛は夢の中に」)、それだけカヴァーが入ってるんですけど、それ以外はオリジナルでやらせてもらいましたね。八十八さんとしては、全部カヴァーでやりたかったみたいですけど。
── 八十八さんとしては、フュージョンというか、ポップなインストゥルメンタル・ミュージックを、カヴァーという形で体現したいと思ったのかもしれないですね。
安藤正容 どうなんですかね? そのあたりを八十八さんがどう思われていたかは、ちょっと分からないですね。でも、レコーディングのやり方とか、エンジニアの方とか、すごくジャズ寄りでした。

── ほとんど一発録りするぐらいの勢いで練習したんですね(笑)。
安藤正容 はい、もう初めてのレコーディングです。レコーディングの仕方について全然知識がなかったので、とにかく“間違えたらそこで終わり”ぐらいの考えしかなくて。だから、レコーディング前にバンドで1週間ぐらいスタジオに入って猛練習しましたね(笑)。当時、パンチイン/パンチアウト(既に録音された音を部分的に差し替える方法)があるなんて知らないし、部分的に直せるなんて思ってもなかったですから。もう、とにかく練習してレコーディングに臨みました。
── ファースト・アルバム『Lucky Summer Lady』は、ジャケットがオシャレというか、ちょっと色っぽい感じの、浜辺での女性の写真ですが、このコンセプトも八十八さんですよね?

安藤正容 (あんどうまさひろ)
1954年生まれ。愛知県出身。’76年に安藤(ギター)を中心にTHE SQUAREを結成。’78年にアルバム『LUCKY SUMMER DAYS』でデビュー。日本が世界に誇るポップ・インストゥルメンタル・バンドとして海外でも精力的に活動、全米でのアルバム・リリース(’88, ’89年)プレイボーイジャズフェスティバル(’94年)への出演(’88年、アメリカでの活動の際に使用していた “T-SQUARE” にバンド名を変更)。アジア圏、特に韓国では’94年の初公演以降これまで7度にわたって公演を敢行し、現地で絶大な人気を得ている。2021年2月、T-SQUARE退団発表後、4月にT-SQUARE在籍最後のアルバム『FLY! FLY! FLY!』を発表。同年夏には<安藤正容Farewell Tour T-SQUARE Music Festival>を開催。2022年、T-SQUAREの元メンバーである則竹裕之、須藤満とアカサカトリオを結成。ソロやデュオなど多様なギター・スタイルでライヴ・ハウスを中心に精力的に音楽活動を展開中。
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2025.6.2