2025年5月号|特集 角松敏生
【Part2】角松敏生スペシャル・ロングインタビュー
インタビュー
2025.5.8
インタビュー・文/柴崎祐二

(【Part1】からの続き)
イメージ通りのサウンドを作れてしまうのは、僕らの世代の特権だし、そういう所作を具現できるのは僕らの世代で恐らく最後になるんじゃないかな
―― 「Contemporary Urban Music」シリーズ第一弾の『MAGIC HOUR 〜Lovers at Dusk〜』は、歌われているモチーフやサウンド、アートワークからも、まさしく時代が移ろってしまったとしても変わらない都市生活者の感情の機微とか、夜の風景が映し出されているように感じます。
角松敏生 そうでしょう。今は80年代と違ってお店の中でみんなタバコは吸わないし、電話ボックスもほとんど無くなってしまった。当然、どんな若者でも車を運転するときにはシートベルトをしている。けれど、街の喧騒とか、夜空の景色とかは全然変わっていないんですよ。わかりやすくいえば、都会人の一般的なライフスタイルは、根底の部分では当時のそれから大きくは変わってないと思うんですよね。アフターファイブにデートしながら食事をして気分が高揚したり、反対に、孤独感を抱えて憂鬱な気分に沈んだり……とかね。今も昔も、デートや着飾った食事を仕事前の早朝に済ます人はいないわけじゃないですか(笑)。夕方から夜が主な舞台です。
―― 世代固有の感覚を超えた普遍的な「都会」のイメージがあるということですね。
角松敏生 そうだと思います。うちの娘なんかも、やっぱりイルミネーションを見るのは大好きですしね。「都会的な記号」が好き、という世代を超えた根源的な美意識みたいなものって確実にあると思いますから。その一方で、昔の街を写した写真を見ると表面上はすごく変わってしまったようにも感じる。だからこそ、あの当時から活動を続けてそういう変化を見てきた自分が、「それでも変わらないもの」をすくい上げていったらどうなるだろうと思って制作したのが、第一弾の『MAGIC HOUR 〜Lovers at Dusk〜』であり、その後に続く二作なんです。
―― Facebookへの投稿で、アルバム制作にあたって頭だけは20代の頃に戻すとおっしゃっていたのもとても印象的でした。逆に言うと、演奏技法や身体的な部分はあくまで「今」の状態で臨んだ、ということでしょうか。

●角松敏生 (かどまつ・としき)
1981年6月、シングル・アルバム同時リリースでデビュー。1993年までコンスタントに新作をリリースし、いずれの作品もチャートの上位を占める。年間で最高100本近いコンサート・ツアーも敢行。また、他アーティストのプロデュースを手掛け、1983年の杏里「悲しみがとまらない」、1988年の中山美穂 「You're My Only Shinin' Star」はシングルチャートの1位を記録、今だスタンダードとして歌い継がれている。1993年にアーティスト活動をいったん「凍結」するが、この期間にはVOCALANDなど多数のプロデュースを手掛ける。1997年にNHK「みんなのうた」として発表した「ILE AIYE(イレアイエ)~WAになっておどろう / AGHARTA(角松が結成した謎の覆面バンド)」は社会現象ともいえる反響を集め大ヒット。1998年に「解凍宣言」を行い、アーティスト活動を再開。凍結前と変わらず精力的にリリースやツアー、脚本・演出・音楽を手掛けたプロジェクト「MILAD」など新たな挑戦を続けている。最新作は、2024年から始まった「Contemporary Urban Music」シリーズの第三弾『Forgotten Shores』。5月2日からは全国ツアー「TOSHIKI KADOMATSU Performance 2025“C.U.M”vol.3 ~Forgotten Shores~」を実施中。
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