2025年5月号|特集 角松敏生
①Earth, Wind&Fire『That’s The Way Of The World』(1975)|角松敏生に影響を与えた(かもしれない)洋邦名盤
レビュー
2025.5.1

Earth, Wind&Fire
『That’s The Way Of The World』
1975年発表
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1. Shining Star
2. That’s The Way Of The World
3. Happy Feelin’
4. All About Love
5. Yearnin’ Learnin’
6. Reasons
7. Africano
8. See The Light
ひとつの生命体のように共鳴・連動しあうことで唯一無二の空気感を醸成
モーリス・ホワイトの強烈なリーダーシップとヴィジョンの元で生まれた本6作目『暗黒への挑戦』は、まさに70年代アフリカ系アメリカ人音楽の到達点であり、同時に角松敏生ならず、世界中のアーティストに刺激を与え続けるエヴァーグリーンな名盤だ。
「シャイニング・スター」のグルーヴとブラス、ゴスペル由来のコーラスに象徴されるソウルフルでポジティヴなサウンドは、ただのダンス・ミュージックに留まらず、アメリカ黒人社会の誇りや希望──つまり“ブラック・イズ・ビューティフル”というアイデンティティと、普遍的な人生賛歌を高らかに謳い上げていく。このアルバムでは、音楽的な要素が個々に主張するのではなく、まるでひとつの生命体のように共鳴・連動しあうことで唯一無二の空気感を生み出している。
特筆すべきはタイトル曲だ。エレクトリック・ピアノとアコースティック・ギターが繊細に交錯するイントロ、澄み切ったヴォーカルと多層のコーラスが空間に溶けていく感覚は、まるで心の奥底にそっと手を差し伸べるようなやわらかさと力強さを同時に携えている。リズム隊のアンサンブルは複雑でありながらしなやか、パーカッションが創る有機的なグルーヴは、アフリカン・ルーツとアメリカ都市部の洗練が渾然一体となる稀有なバランスで成立。時に霧の向こうから差し込む朝日のような明るさと、生命力に満ちたグルーヴが交錯する。
文/油納将志
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②鈴木茂『BAND WAGON』(1975)|角松敏生に影響を与えた(かもしれない)洋邦名盤
レビュー
2025.5.2