2025年5月号|特集 角松敏生
M1「Blue Swell」|ニューアルバム『Forgotten Shores』全曲解説
解説
2025.5.1
文/小川真一

M1「Blue Swell」
波の上を滑走する風のように颯爽としたアーバンなポップス
冒頭から力強いビートが打ち出され、豪快に幕開けを告げていく。まるで目の前に大きな青空が広がっていくような、そんな爽快感が溢れ出してくる。これはまさに夏の音楽。Contemporary Urban Musicと呼ぶのに相応しいサウンドだ。
『Forgotten Shores』は、角松敏生が提唱するContemporary Urban Musicシリーズの第3弾。その名にふさわしく、現代的な感覚と普遍性とをどちらも兼ね備えている。今回のアルバムは80年代のフレーバーが重要なモチーフとなっていて、随所にそのキーワードが隠されているのだ。この1曲目の「Blue Swell」でいえば、シャンデリアを思わせるきらびやかなブラス・セクションや、全体を優しく包みこんでいく女性コーラスなど、このゴージャス感こそが大事なのだ。
ブラス・セクションを担当したのは、本田雅人、野々下興一、エリック宮城など総勢9名。この人的パワーが、角松敏生のサウンドに雄大なスケール感を与えている。ブラス隊を取りまとめたのはトロンボーン奏者の中川英二郎で、この彼のブラス・アレンジメントが今回のアルバムの重要な鍵を握っていると言ってもいいだろう。
前回に引き続き、山本真央樹と山内薫のリズム・セクションが素晴らしいコンビネーションを聞かせてくれる。これは本当に心強いと思う。曲を作る時も、彼らの存在を想定して書いているのではないのだろうか。そう思わせるほどのグルーヴを発散している。
角松敏生のメロディー・ラインも歌も、とても熱い。熱情を押し隠さずに、すべてさらけ出している。とはいえもちろん汗臭いわけではなく、まるで波の上を滑走する風のように颯爽としている。これが角松敏生のファンクネスであり、彼しか作り出すことのできないアーバンなポップスであるのだ。
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