2025年4月号|特集 シュガー・ベイブ
【Part3】アルバム『SONGS』発表|シュガー・ベイブSTORY
解説
2025.4.15
文/小川真一

(【Part2】からの続き)
シュガー・ベイブ『SONGS』。創意と工夫と野心と試練。
シュガー・ベイブのデビュー・アルバム『SONGS』は、’75年の4月25日に、ナイアガラ・レーベルの第一弾として発売された(オリジナル番号 ナイアガラ⁄エレック NAL-0001)。「0001」というレコード番号が、なんとも初々しい。当時の帯には「決定!! ニューミュージックへの道 全ての音楽の進むべき道がここに見えた」のコピーが踊っていた。
“ニューミュージック”という言葉に驚かされるかもしれない。シュガー・ベイブの音楽に、この響きは似合わないと思われた方もいるのではないかと思う。その後このニューミュージックは、いろいろな使い方をされるようになり様々な属性に染まっていくのだが、’75年という時制においては無限の可能性を持つ希望にあふれた言葉だった。旧来の歌謡曲ではない、フォークソングともまた違っている。日本に登場してきた真新しい音楽。このような意味で使われていたのだ。

シュガー・ベイブ
『SONGS 50th Anniversary Edition』
2025年4月23日発売
最初に『SONGS』を聞いた時、ただひらすらに眩しかったのを思い出す。まるで大きな窓が開かれたような、太陽の光に全身が包まれる感触だ。シュガー・ベイブがどんなグループなのかもよく知らず、元はっぴいえんどの大滝詠一の関連のアルバムとして手にしたのだと思う。
それはポップという言葉が一番似つかわしいのだが、それまでの日本に存在していたポップさとは手触りが異なっていた。人工的な感じがなく、オーガニックで自然体。当時よく聞いていた洋楽のフィールに近く、例えばキャロル・キングがチャールズ・ラーキーやダニー・コーチマーと組んでいたザ・シティのアルバムや、ソングライターのピーター・ゴールウェイが参加していたフィフス・アヴェニュー・バンドを思い浮かべた。
「SHOW」での、幕開けを告げる煌めくようなリズムに圧倒された。鮮やかな景色が目の前に広がっていく感触だ。心をときめかせるビート、そして高揚に導いていくコーラス。すべてが一体となって胸に迫ってくる。
そんな気持ちを「DOWN TOWN」のギター・カッティングがさらに高めていく。コンプレッションのほどよく効いたハーフトーン・サウンド。そのギターのシャープな音色がクラヴィネットと重なり合い、とてつもないほどのグルーヴ感を生み出していく。こんなマジカルな音楽は、他では聞いたことがなかった。


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