2025年4月号|特集 シュガー・ベイブ
①SHOW|『SONGS 50th Anniversary Edition』全曲解説
解説
2025.4.1
文/油納将志

「SHOW」
words & music by 山下達郎
普遍性と革新性を両立させた“新しい時代”の到来を予感させるオープナー
山下達郎がアメリカンポップスやソウルミュージックから吸収したエッセンスを日本的情緒と融合させたこの「SHOW」は、当時の日本音楽シーンにおいて異端とも言える洗練されたコード進行とアレンジを特徴としている。特にメジャー7thや分数コードを駆使したハーモニーは、従来の歌謡曲にはない都会的でモダンな響きを生み出し、その軽快なリズムセクションと相まって、“新しい時代”の到来を予感させるものだった。
注目すべきはコーラスワークだ。山下達郎、大貫妙子、村松邦男による緻密で美しいハーモニーは単なる装飾ではなく、「SHOW」というタイトルそのものが象徴するように、聴き手に“見せる”音楽として機能している。これこそがシュガー・ベイブの革新性であり、後にシティポップというジャンルが確立されていく際の礎となったと考えられる。また、この曲が持つ軽快さと洗練された雰囲気は単なる音楽的実験ではなく、当時の都市生活者たちのライフスタイルや価値観を反映したものであり、その意味で社会的文脈とも深く結びついている。
当時、日本の音楽シーンはまだ歌謡曲中心であり、このような西洋音楽への深い理解と解釈を伴った作品は極めて稀だった。しかし、この曲には山下達郎自身が持つ、日本人として西洋音楽をどう咀嚼し、新しい形で提示するかという明確なヴィジョンが刻まれている。その後の山下達郎、大貫妙子、大滝詠一らによる活動にも通じる“普遍性”と“革新性”の両立が、この3分余りの楽曲に凝縮されていると言っていいだろう。


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②DOWN TOWN|『SONGS 50th Anniversary Edition』全曲解説
解説
2025.4.2