2025年3月号|特集 奥田民生 29-30
【Part3】奥田民生が語る『29』『30』
インタビュー
2025.3.19
インタビュー・文/大谷隆之 写真/山本佳代子

(【Part2】からの続き)
タイトルまんまで「29歳の自分は今、こんな感じです」っていう、それだけだった
── いずれにせよ『29』のニューヨーク録音は、民生さんの「ロックンロールのグルーヴに対する認識」に決定的な影響を残したわけですね。
奥田民生 うん。そうっすね。
── 楽曲でいうと「ルート2」「ハネムーン」「息子」「これは歌だ」「BEEF」「人間」の6つ。リズムや曲調はそれぞれ違いますが、どの曲もシンプルな構造で、かつギミックがほとんどないのが特徴です。実際に現地でセッションをしてみて、具体的にはどういう部分が新鮮だったんですか?
奥田民生 うーん……やっぱ、ドラム(スティーヴ・ジョーダン)ですかね。もちろんベース(チャーリー・ドレイトン)もそうだし、それを言ったらギター(ワディ・ワクテル)も鍵盤(バーニー・ウォーレル)も全部なんですけど。一番わかりやすく「ああ、日本にこんな人はいないわ」って思ったのは、ドラム。あの人の中にあるドラマー像っていうか。頭で「こう叩きたい」って思い描いてるイメージ自体が、そもそも俺らとは違うんだろうなって。一緒に演奏してみて、そんなことは思ってましたね。
── 29歳の民生さんにとって、それはけっこうな驚きでした?
奥田民生 もちろん、知ってはいたわけですよ。海外のレコードとか聴いて「おお、このグルーヴすげーな」って感動した経験は多々あった。でも自分が持ってった曲がそうなると、やっぱり一番わかるじゃないですか。何つーか、微妙なノリの変化みたいなものが。
── なるほど。作った当人だからこそ、肌で感じる違いがある。
奥田民生 そうそう。「あれ、俺の曲もこうなっちゃうんすか?」みたいなね(笑)。本当に「おおー!」という驚きがあって。やっぱり経験として、それはめちゃくちゃデカかった。本場のミュージシャンは凄いとか、そういう言い方って俺はあんまりしたくないんですよ。上手さで言えば、実は日本人の方が覚えが早かったりしますし。なんだけど、ドラム、ベースのグルーヴが違うのは、ちょっと否定のしようがないなと。
── しかもそれは、民生さんにとって、明らかに気持ちがいいものだったと。
奥田民生 そうなんです。で、シンプルに「もっとやりたいな」という気持ちになった。
── 先ほど挙げた6曲で、その違いが一番顕著なのはどれだと思いますか?

●奥田民生 (おくだ・たみお)
1965年広島生まれ。1987年にユニコーンでメジャーデビューする。1994年にシングル「愛のために」でソロ活動を本格的にスタートさせ、「イージュー★ライダー」「さすらい」などヒットを飛ばす。また井上陽水とコラボ作品を発表したり、PUFFYや木村カエラのプロデュースを手がけたりと幅広く活躍。バンドスタイルの「MTR&Y」、弾き語りスタイルによるライブ「ひとり股旅」や、レコーディングライブ「ひとりカンタビレ」、YouTubeで繰り広げる宅録スタイルのDIYレコーディングプロジェクト「カンタンカンタビレ」など活動形態も多岐にわたる。さらに世界的なミュージシャンであるスティーヴ・ジョーダン率いるThe Verbsへの参加、岸田繁(くるり)と伊藤大地と共に結成したサンフジンズ、斉藤和義・トータス松本ら同世代ミュージシャンと結成したカーリングシトーンズの一員としても活躍している。2015年に50歳を迎え、レーベル・ラーメンカレーミュージックレコード(RCMR)を立ち上げ、2024年にソロ活動30周年を迎えた。2025年3月には『記念ライダー30号』29-30 BOXスペシャルとLIVE Blu-ray 「ソロ30周年記念ライブ「59-60」@両国国技館」をリリース。吉川晃司とのユニット“Ooochie Koochie”も始動した。
https://okudatamio.jp/
https://rcmr.jp/
https://www.ooochie-koochie.jp/
https://x.com/OT_staff
https://www.facebook.com/rcmr.jp
https://www.instagram.com/rcmr_official/
https://www.tiktok.com/@rcmr_official
https://www.youtube.com/c/RCMROfficialYouTubeChannel_jp

-
【Part4】奥田民生が語る『29』『30』
インタビュー
2025.3.26
-
【Part2】奥田民生が語る『29』『30』
インタビュー
2025.3.12