連載|伊波真人のシティポップ短歌

今月のお題「ハイ・ファイ・セット / 卒業写真」

2025.3.17

今月のお題

ハイ・ファイ・セット / 卒業写真1975年


5人組のフォークグループ、赤い鳥を解散した後、山本潤子、山本俊彦、大川茂の3人のメンバーで結成したハイ・ファイ・セット。荒井由実が提供した「卒業写真」を収め、タイトルにもなった彼らのファースト・アルバムが本作である。服部克久による華々しい「オーバーチャー」からつながる村井邦彦作曲のゴキゲンな「エイジズ・オブ・ロック・アンド・ロール」で見事なコーラスワークを聞かせ、冒頭から彼らの実力ぶりをたっぷりと堪能できる。グルーヴィーな「フィッシュ・アンド・チップス」や同じくユーミンの名曲をカヴァーした「海を見ていた午後」など佳曲揃いで、洗練されたハーモニーに魅了されるだろう。

この町を離れ去ってもこの町の 風景はそのことを知らないこの町を離れ去ってもこの町の 風景はそのことを知らない



伊波真人(いなみ・まさと)

歌人。1984年、群馬県高崎市生まれ。早稲田大学在学中に短歌の創作をはじめる。2013年、「冬の星図」により角川短歌賞受賞。雑誌、新聞を中心に短歌、エッセイ、コラムなどを寄稿。ポップスの作詞家としても活動中。ラジオ、トークイベントへの出演なども行う。音楽への親しみが深く、特にシティポップ、AORの愛好家として知られる。著書に、歌集『ナイトフライト』などがある。