2025年3月号|特集 奥田民生 29-30
①THE YELLOW MONKEY『smile』|『29』『30』時期の邦楽ロック in 1995
レビュー
2025.3.3
THE YELLOW MONKEY
『smile』
1995年2月1日発売
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01. Smile
02. マリーにくちづけ
03. Love Communication
04. サイケデリック・ブルー
05. See-Saw Girl
06. 争いの街
07. エデンの夜に
08. イエ・イエ・コスメティック・ラヴ
09. ヴィーナスの花
10. “I”
11. Hard Rain
12. 嘆くなり我が夜のFantasy
13. 熱帯夜
ロックバンドとして最高にスリリングな瞬間の記録
1995年2月1日にリリースされた4枚目のオリジナルアルバムは、初のチャートトップ10ヒットを記録した彼らの出世作。しかし前作『jaguar hard pain』が太平洋戦争で戦死した若い兵士の魂をテーマにしたコンセプトアルバムだったことの反動や、白地にロゴと人物写真をあしらったアートワークがブリットポップを代表する英国のロックバンド、スウェードの作品に酷似していたことから、コアなファンの間ではセルアウトではないかと物議を醸した作品でもある。
しかしシングルカットされた「Love Communication」「熱帯夜」「嘆くなり我が夜のFantasy」の完全に振り切ったポップネスからは、そんな批判を受けてでもスターダムを掴み取ろうという覚悟が伝わってくるし、彼らの念頭にあったのはスウェードではなく、世界的な成功を収めつつあったオアシスや初期ビートルズの方法論だったのではないかという気がする。本作リリースのわずか3ヶ月後に初の日本武道館公演を成功させ、2年後には第一回フジロックフェスで日本のバンドとして最初のヘッドライナーの座を掴んだことを踏まえれば、この大勝負の成否はもちろん明らかだ。つまり本作はロックバンドとして最高にスリリングな瞬間の記録である。
そして彼らが切り拓いたデヴィッド・ボウイ直系のグラムロックにGS由来の艶っぽい日本的メロディを組み合わせるという手法は、9mm Parabellum Bulletや毛皮のマリーズといった後進のバンドへと引き継がれることになる。
文/ドリーミー刑事

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②斉藤和義『WONDERFUL FISH』|『29』『30』時期の邦楽ロック in 1995
レビュー
2025.3.4