2025年2月号|特集 田島照久 MUSIC ARTWORKS

【Part4】田島照久×須藤晃 ~尾崎豊アートワーク~OZAKI 20プログラム再編集版

会員限定

対談

2025.2.26

文/ウェブマガジンotonano編集部(再編)



【Part3】からの続き)

僕らは、いろんなことをだんだん忘れていくけれど、どういうわけか尾崎くんとのことは細かいことまで全部覚えている(田島)

「今投げたのは俺の夢だから、壊さないで!」という言葉が昨日聞いたかのようによみがえるなあ(須藤)



須藤 (中略)『街路樹』(’88年)のジャケットというのは、十代の3枚とは随分違いますよね。

田島 (尾崎・須藤・田島の)3人というチームが変わったわけだから、今までみたいに須藤くんに頼んでいた世界感は望めない、吉野(金次)さんと会った時も、そんなジャケットの話まではいかなくて、『街路樹』というタイトルに英語タイトルをつけるということ自体、あざとい気がした。これは小細工はダメだなと思ったんです。尾崎くんも『街路樹』という日本語のままのタイトルを望んでたし、だから、素直にそれまでのアプローチを変えたんです。

須藤 『街路樹』だけは違うレコード会社から出てるし、一般の人たちからもなじみが薄いというか。でもあのアルバムが一番好きだという人もいる。ある意味では苦悩の中で作られたとはいえ、尾崎豊的ですよね。

田島 順を追って聴いてみると、あそこであのアルバムは必要だったと思いますよね。

須藤 僕にとっても特別な意味がありますね。あれを作らなければならないという経過としてはすごく重要なアルバムだと思いますね。


尾崎豊 
4thアルバム
『街路樹』

1988年9月21日発売


田島 そう言えば、ジャケットデザインの最終確認をしてもらわなくてはと思っているところに、尾崎くんが電話をくれて、ひとりで、僕の事務所にやって来てね、写真を選んだり、文章を書いたりしてね。そうか、もうここには須藤くんは居ないわけだから、ひとりで何でもやることにしたんだと思ったね。ジャケット用の写真は凄く気に入ってくれてね。「よかった、カッコよく撮ってもらって」ってご機嫌だった。

 面白かったのは、その日は、山手線に乗ってひとりで原宿まで来たらしいんだけど、途中で、前に座っている男どもから、「おい、見ろよ、まーた、尾崎豊みたいな格好したヤツが居るぞ、最近多いよな、ああいうの」って話してるのが聞こえたんだって。だから、「うるせーなあ、一応、オレ、本人なんだけど」って、そいつ等に聞こえるように言い返したら、フンって無視されたんだって。僕はもう大笑いしてた。そんなおかしな失敗談ってよくしてくれたよね。尾崎くんの話って通常では考えられないことが多くて、根っからのエンタテインメント性を引き寄せる人だと思うね。そんなわけで、ふたりでお茶を飲んだりしながら、和やかな数時間を過ごしたんだけど、終始、笑い声に包まれた尾崎くんを見たのはこの時が最後だったような気がするね。

『田島照久MUSIC ARTWORKS』より


須藤 (中略)「太陽の破片」(’88年)のジャケット撮影はどうでした?

田島 撮影スタジオで会った時に「ご心配をおかけしました」って改まって挨拶してくれて、元気そうで安心しました。ちょっと体重は増えてはいたんだけれど、クリエイティブだったですね。事前にアイデアを話したりはしてないんだけど、光の筋を撮りたかったのね。光の筋に手を差し伸べている尾崎豊を。イメージとしては幽閉されているところから光を求めているというか。直ぐに彼はそれを分かってくれて。ただ光の筋をつくるにはスモークを焚かないといけないんだけれど、当時のスモークマシンというのはとても喉に悪いんです。スタジオの閉鎖空間でスモークを焚く撮影というのは相当キツいんですけど、とにかく夢中でした。ポラを何回も撮って、もうちょっと手をこうしてみましょうか……と何回もやり直して、とてもクリエイティブな尾崎くんに戻っていたので僕はよかった、と思いましたね。

須藤 (中略)『BIRTH』(’90年)のアルバムブックレットに入ってる絵っていうのは……。

田島 あれは須藤くんが、僕の事務所で話し始めたんだよ、このアルバムのテーマについての話をし出して、ARTERY & VEINという、動脈と静脈っていう詩を須藤くんがその場で書き出したんだよ。須藤くんはあのアイデアは温めていたの?



尾崎豊特別展<OZAKI 20>公式プログラム

上記対談は、2012年に開催された尾崎豊特別展<OZAKI 20>公式プログラム(写真)内に掲載された「TERUHISA TAJIMA vs AKIRA SUDOH INSIDE TALK SESSION」を一部抜粋・再編集した内容です。約3万字におよぶノーカット版「TERUHISA TAJIMA vs AKIRA SUDOH INSIDE TALK SESSION」を含む『OZAKI 20』公式プログラム(通常版)はOZAKI 20オフィシャルグッズストアでお求めいただけます。
https://www.official-store.jp/ozaki/products/detail.php?product_id=14



須藤晃 (すどうあきら)
●音楽プロデューサー・作家。1952年8月6日、富山県生まれ。’77年、東京大学英米文学科卒業後、株式会社CBS・ソニー(現ソニー・ミュージックレーベルズ)入社。’96年より株式会社カリントファクトリー主宰。尾崎豊、村下孝蔵、玉置浩二、浜田省吾、杉真理、橘いずみ、石崎ひゅーいらを担当し、シンガーソングライターのパートナーとして数々の名曲・名アルバムを発表。言葉(歌詞)にこだわったプロデュース・スタイルでメッセージ性の高い作品を生み出し続けている。
www.karinto.co.jp



田島照久 (たじまてるひさ)
アート・ディレクター、グラフィック・デザイナー、写真家 、THESEDAYS 主宰。 1949年福岡県生まれ、多摩美術大学グラフィック・デザイン科卒業。 CBS・ソニー(現ソニー・ミュージックレーベルズ)デザイン室の勤務を経て渡米、’80年よりフリーランスとなり、‘92年に現在のデザインプロダクション "THESEDAYS" を設立。 浜田省吾、尾崎豊をはじめとする多くのミュージシャンの撮影とパッケージ・カヴァーのアート・ディレクターを務める。 仕事はエディトリアル、ポスター、広告、カレンダー、写真集、小説やコミックの装丁などグラフィック全般に及ぶ。
http://www.thesedays.co.jp/artworks-0214/index.html




●日本を代表するアート・ディレクター田島照久、究極の作品集が2/26発売!!


『田島照久 MUSIC ARTWORKS』
2025年2月26日発売
SRCL-13143〜13144/¥13,500(税込)
豪華三方背ボックス仕様/完全生産限定盤
http://www.thesedays.co.jp/artworks-0214/index.html

[ボックス収録内容]

★ART BOOK(作品集)
オールカラー/200ページ/A4横長変型サイズ(200×210)
田島照久が手がけてきたLP、CD、DVD、Blu-rayパッケージ・デザイン、ポスター、広告、グッズ、シミュレーション、各種別バージョンなど貴重なデザイン作品の記録集。厳選240作品以上収録! 作品別の制作ノート付き

★CD(紙ジャケット仕様)
収録曲 *田島照久が選曲したコンピレーション
01. 青空のゆくえ / 浜田省吾
02. Key Station / 杉 真理
03. 瞳・元気 / 永井真理子
04. 笑顔を探して / 辛島美登里
05. 心の友 / 五輪真弓
06. 日付変更線 / 南 佳孝 duet with 大貫妙子
07. 素直になりたい / ハイ・ファイ・セット
08. BRIDGE~あの橋をわたるとき~ / HOUND DOG
09. 僕が僕であるために / 尾崎 豊
10. HARMONY MAKER(A Song of Shogo Hamada) / 田島照久 featuring 澤口のり子

★BOOKLET
2C/28P/歌詞/全曲解説/田島照久による全曲選曲コメント付
『田島照久 MUSIC ARTWORKS』を軸にキャリア53年(ソロ活動45年)を田島照久本人が総括する約1万字の最新ロング・インタビューもお楽しみください!

★POSTCARD
表紙とは別バージョンのアート・カード同梱


●好評配信中!
伊藤銀次のネット・ラジオ『POP FILERETURNS』
第463回(前編)/第464回(後編) 田島照久を迎えて
https://otonanoweb.jp/s/magazine/diary/detail/10477

●2月15日(土)22:00~OA
テレビ東京系『新美の巨人たち』
<デザイナー田島照久/尾崎豊「十七歳の地図」レコードジャケット>
 Art Traveler:辛島美登里/ナレーター:磯村勇斗
https://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/