2024年12月号|特集 TM NETWORK|The Force

【Part3】<TM NETWORK 2024 intelligence Days FANKS inside>へ続く|TM NETWORKドキュメンタリー 2023-2024

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解説

2024.12.19

文/兼田達矢


【Part2】からの続き)

【Part3】<TM NETWORK 2024 intelligence Days FANKS inside>へ続く……


 40周年のライヴ展開がいよいよ佳境に入った2024年5月15日、『TM NETWORK TRIBUTE ALBUM -40th CELEBRATION-』がEPICレコードよりリリースされた。

 トリビュート・アルバムというのは、基本的には対象アーティストに対する愛情や尊敬の念を参加アーティストがそれぞれに持ち寄るものだから、そういう気持ちの部分での一貫性というかトータリティーはキープされていても、選曲や個々の音楽的内容はやはり参加アーティストそれぞれに委ねられるから、音楽作品としてのアルバム的なまとまりは薄く、いわゆる曲集的な仕上がりになっているケースがしばしば見受けられる。が、TM自体の活動や作品が常にそうした通り相場的なイメージから逸脱していくのに似て、このトリビュート・アルバムもTMのプロジェクトに共通する周到な構築感がしっかりと感じられる内容になっている。


アルバム
Various Artists
『TM NETWORK TRIBUTE ALBUM -40th CELEBRATION-』

2024年5月15日発売


 1曲目のGRe4N BOYZによる「SEVEN DAYS WAR」のエンジニアがTMサウンドを支えてきた伊藤俊郎だったり、7曲目の西川貴教「LOVE TRAIN」のアレンジをTK SONG MAFIAの3人が担当していたりといった具合に、メンバー3人と深く関わりのある才能も参加しているから、自然とTM本体の匂いや味わいが漂ってくるのは当然のことなのかもしれないけれど、それにしてもである。「Get Wild」や「SEVEN DAYS WAR」、「Self Control(方舟に曳かれて)」といったシングル曲と「TIMEMACHINE」や「ELECTRIC PROPHET(電気じかけの予言者)」のようなFANKSにとってのコア・ナンバーのバランスも絶妙だし、ディスコ/クラブ・シーンやアニソン・シーンへのTMサウンドの影響の大きさを知らしめることも忘れていない。腕利き揃いのレジェンド・バンドSKYEによるヒューマンな演奏でTMサウンドのベースにあるファンクネスを確認できるのも楽しいし、くるりやクラムボンといった一見TMサウンドからは遠いところにいるように思えるバンドのTM解釈が逆にTMサウンドの裾野の広がりがほぼJ-POP全体に及んでいることも感じさせてくれる。その上で、それぞれに魅力的なカバーに対応する形でそのオリジナル・バージョンが収められた別ディスクが用意されていることによって、例えばユーミンが参加しているから、あるいは満島ひかりが参加しているから、という理由でこのアルバムを手にした非TMリスナーをTMワールドに導く効果的な入門ガイドにもなっている。

 さらに言えば、入り組んだTMサウンドを独自の発想で料理するその手際から、例えばくるりサウンドの秘密やクラムボンの音楽の魅力を逆に再発見することもあるだろう。そうした深い奥行きが生まれるのもネタになっているTMの音楽の懐の深さ故、と言ってしまうと話を単純化し過ぎることになるかもしれないが、このアルバムの音楽的な面白さを味わえば、TMトリビュートの第2弾、第3弾を期待したくなる音楽ファンは少なくないのではないか。