2024年12月号|特集 TM NETWORK|The Force

【Part2】<TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days〜STAND 3 FINAL~>|<TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days~YONMARU~>|TM NETWORKドキュメンタリー 2023-2024

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解説

2024.12.16

文/兼田達矢

©M-TRES Inc.


【Part1】からの続き)

【Part2】TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days〜STAND 3 FINAL~|TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days~YONMARU~


 40th Anniversary yearはやはり、ライヴから始まることになった。

 というか、メンバー3人の感覚を推し量れば、2023年から2024年というカレンダー上の区切りよりも、すでに始まっている40周年プロジェクトという大きな流れのラウンド2に入っていくという感じのほうが強いのかもしれないが、いずれにしても彼らの活動スケジュールがいつでも周到に計画されたものであることを思えば、40th Anniversary yearを例えば何かのリリースやテレビ出演ではなくライヴで始めるのは明確に意図されたことだろうし、「再起動宣言」以降の展開が常にライヴを起点として熱量を高めてきた、その気持ちの流れの延長線上で意識されたことだろうと思われる。

 1月18日に三郷市文化会館から始まったそのツアー<TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days〜STAND 3 FINAL〜>(以下STAND 3 FINAL)は、全国7都市で9公演を開催。会場のキャパシティは名古屋センチュリーホールや立川ステージガーデンの約3000というのがマックスの、いわゆるホール・ツアーで、そのスケール感というか、ステージ上の3人との近さがFANKSにはまず印象的だったに違いない。同じくホール・ツアーだった先の<DEVOTION>ツアーはTM NETWORKがすべての来場者と出会い直す機会だったのではないかと前回書いたが、この<STAND 3 FINAL>ツアーではそこからさらに一歩進めて、メンバー3人のミュージシャンとしての現在の充実を伝えることが意識されていたのではないかという気がする。ライヴの定番曲がほぼ入っていないセット・リストは、楽曲の人気だけで盛り上がるということを期待できないし、そもそも3人だけでTMの楽曲を披露すること自体、ミュージシャンとしてのポテンシャルが問われる形だ。その形でライヴを続けてきたこと自体、よりシンプルな有り様でFANKSと向き合いたいという彼らのメッセージだと受け取るべきだろうが、同時に3人が、特に小室哲哉がこの形に小さくない手応えを感じていたからこそ、この形が選ばれてきたに違いない。




LOVE TRAIN(from STAND 3 FINAL)


 実際、このツアーでは木根尚登がピアノでもギターでも達者な演奏を随所に披露し、小室は持ち前の多彩なキーボード・プレイに加えてボーカルでも奮闘が目立ったが、とりわけ宇都宮隆のボーカリストとしての存在感は際立っていて、その華のあるパフォーマンスと鍛えられたボーカル・ワークはやはり唯一無二と思わせた。しかも、そのそれぞれに優れた3つの個が絶妙の間合いで音楽的にもステージ・パフォーマンスの上でも絡み合うのだから、いいステージにならないわけがない。この3人だけのフォーマットの成熟は、将来TMのライヴの歴史を振り返る際にはきっと重要な一つのトピックとして語り継がれることになるだろう。


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『TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days ~STAND 3 FINAL~』

2024年7月10日発売
©M-TRES Inc.


 ちなみに、このツアーのセット・リストでは木根がエルトン・ジョンばりのピアノ演奏を聴かせるイントロから始まる「You can Dance」がクライマックスの一つになったが、そのシーンはグランドピアノをデンと据えた上にアレンジ面でもピアノのフィーチャー度が高かったこのツアーを象徴する場面であり、そのピアノ・フィーチャー傾向はギター推し感が強かった先の<DEVOTION>ツアーとのコントラストも意識されていたのかもしれない……。ただし、WOWOWで放送された3人だけで展開されるトーク番組『TM NETWORK 40th Anniversary Premium Talk Session』の第2回で、<DEVOTION>ツアーの仙台公演で手元が見えずギターを間違えたことにひどく落ち込んだという話が木根自身の口から明かされ、さらにはその反省も込めて小室に「ピアノのほうがいいね」と話したことがこのツアーでのピアノのフィーチャーに繋がったと語られたことも付記しておくべきだろう。

 さて、彼らは<STAND 3 FINAL>ツアーを3月8日に終えると、早くも翌4月の20日には次なるツアー <TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days〜YONMARU〜>をスタートさせた。というか、これも冒頭に書いたのと同様、3人にしてみれば40周年プロジェクトいう大きな流れのラウンド3に粛々と駒を進めたという感じなのだろうが、それにしてもその大詰めのタイトルを知った最初の感想としては“?”とか“……”といった感じのファンも少なくなかったのではないか。ホール・ツアーを重ねてきた上でのアリーナ・ツアーという大団円感が予想される一方でのタイトル <YONMARU>である。もちろん今となっては、その語源には韓国語説やラテン語説があるようだが、とにかく“集大成”というような意味だということは知られているから、むしろその可愛い語感が素敵!ということになるのかもしれないけれど。あるいは、最後の2日間が1994年の<LAST GROOVE>と同じ5月18日、19日という日付で、おまけに40周年記念ツアーを締めくくるその19日の公演が <Day40>となる精緻さと<YONMARU>の語感の落差こそがTM NETWORKの魅力、と言うべきなのだろう。



TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days ~YONMARU~(2024年9月25日発売)