2024年11月号|特集 吾妻光良&ザ・スウィンギン・バッパーズ
【Part4】吾妻光良スペシャル・ロングインタビュー
インタビュー
2024.11.22
インタビュー・文/内本順一 写真/山本佳代子
(【Part3】からの続き)
このアルバムをきっかけにジャンプとかブルースに興味を持ってもらうことが一番の望み
―― 「打ち上げで待ってるぜ」は吾妻さんとアルトサックス&ヴォーカルの渡辺康蔵さんがふたりで歌っている曲。前作『Scheduled by the Budget』の1曲目「ご機嫌目盛」も、おふたりで歌われた曲でしたね。
吾妻光良 クリフとクロードのトレニアー兄弟を中心としたジャンプブルースのものすごいバンドで、トレニアーズというのがいましてね。1940年代から60年代頃まで活動していた、踊って歌えるエンターテインメントの極致のようなバンドなんですけど、彼らの「GO, GO, GO」という曲のカヴァーをヴィヴィッドの2枚目(『HEPCATS JUMP AGAIN』)でやって、それをきっかけに康蔵とふたりで歌うということをやりだしたんです。その形で最初に日本語のオリジナルを作ったのが「最後まで楽しもう」(5thアルバム『Seven & Bi-decade』収録)という曲で、その続編として「ご機嫌目盛」を作って、そのまた続編が今回の「打ち上げで待ってるぜ」。昔のR&Bやブルースのグループはよく柳の下のどじょうを狙って何回も同じような曲を出していたんですけど、それに習って「またこの路線かよ?!」と呆れられるまでやろうと思っています。
―― 「気がつきゃずいぶん長いよな 色々あったぜ」と始まる歌で、45年間のバッパーズの歴史を振り返っているふうにも聴こえます。
吾妻光良 それはちょっと気にして書きましたね。「気がつきゃずいぶん長いよな」というのは、1979年を振り返っているところもなくはない。
―― やっぱり45年も経つと、しみじみ振り返る心境になるものですか?
吾妻光良 あんまりしみじみしたくないし、それはルイ・ジョーダンの教えにも反するけど、この齢になると亡くなっちゃうやつも多いわけですよ。今年一番ショックだったのは昔からの友達の小出(斉)が亡くなったことで。まさか亡くなるなんて思ってなかったから。だから、いきなり逝くなよ、打ち上げくらいはいてくれよ、という気持ちもあって。
―― あっ、「いきなりドロンはやめとけ」というのは、そういう意味だったんですね。
吾妻光良 そうそう。暗い感じになっちゃうとアレなのであんまり言ってないんですけど、そういうのもちょっとありました。で、2番の「シャワー浴びてる場合じゃない」ってのは、ツアーのときにこれから打ち上げに行くと言っているのになかなか降りてこないやつがいて、「なんだお前、シャワー浴びてたのか?」って。必ずそういうメンバーがいるんですよ。1番の「ドロンはやめとけ」と深みが全然違いますけど(笑)。まあ、この歌は大きく言うと、「思い出話をして呑むのは楽しいな」っていうことです。
●吾妻光良 (あづま・みつよし)
1956年、新宿生まれ。'70年にB.B.キングの来日公演を観て以来ブルースを聴くようになる。高校、大学を通じてバンド活動を行い、永井隆のブルー・ヘヴンや妹尾隆一郎のローラー・コースターにも参加。大学在学中の'79年に卒業記念として吾妻光良&ザ・スウィンギン・バッパーズを結成。翌年3月のJIROKICHI公演~卒業でおしまい、となるはずが、年に1、2回程度の再演、それが3回、4回と増えていくうちに45年の月日が経つ。会社員との二足の草鞋状態で音楽活動していたが、2021年に晴れてプロ入り(定年)。吾妻光良トリオ+1やソロでもライヴを行っている。文筆家として著書『ブルース飲むバカ歌うバカ』がある。
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【Part3】吾妻光良スペシャル・ロングインタビュー
インタビュー
2024.11.15