2024年10月号|特集 和ジャズ
第3回:尾川雄介(UNIVERSOUNDS)|今、和ジャズを聴く理由
コラム
2024.10.23
文/尾川雄介(UNIVERSOUNDS)
今、和ジャズを聴く理由
「日本のジャズ・ロックの発展は、稲垣次郎、猪俣猛、石川晶、この3人のミュージシャンによってもたらされた」。これまでに幾度となく書いてきた/話してきた文面である。うち石川は2002年に他界。そして今年2024年、稲垣と猪俣が相次いで他界してしまった。
1969年、稲垣と石川は連れ立って訪米。ウッドストックの熱気冷めやらぬ現地のシーンに触れ、ともに新たな音楽への挑戦を決意する。そして帰国後、稲垣はソウル・メディアを、猪俣はサウンド・リミテッドを結成し、ジャズ・ロック街道を邁進することになるのだ。
あれから55年。ジャズ・ロックは新たな潮流となり、やがてフュージョンの一端を担い、その後の音楽にも大きな影響を与えてきた。2000年代になりあの時期のジャズ・ロックが世界的にも高く評価され人気となったが、稲垣は「いまは『ヘッド・ロック』が人気なの?へ~。ジャズ・ロックなんてやっていたのは僕と猪俣と石川くらいだったからね。当時は全然売れなくて」と愉快そうに語っていた。
理屈抜きにガツンとくる、衝動の塊のような熱い音楽。もう、こんな音楽が生まれることはないんだろうな、と思いつつ。
<私が好きな和ジャズの名盤3枚>
尾川雄介 (おがわ・ゆうすけ)
●2001年より中古レコード店 UNIVERSOUNDS を主宰。その眼識やアーカイヴ力を基に、再発監修、レーベル運営、DJ、ライターなど幅広く活動。<Deep Jazz Reality>や<PROJECT Re:VINYL>といったシリーズを中心に、手掛けた再発やコンピレーションは250タイトルを超える。共著『和ジャズ・ディスク・ガイド』や『インディペンデント・ブラック・ジャズ・オブ・アメリカ』をはじめとし、ディスク・ガイドや音楽誌、またライナーノーツの執筆多数。
https://www.universounds.net/
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