2024年10月号|特集 和ジャズ

第2回:遠藤亮輔(日本コロムビア)|今、和ジャズを聴く理由

会員限定

コラム

2024.10.21

文/遠藤亮輔(日本コロムビア プロデューサー)

今、和ジャズを聴く理由


 ここ数年の海外からの和ジャズ熱は目を見張るものがある。日本でも以前から音楽通の間で和ジャズが話題に上がることがしばしばあるが、その中心は40代以上の男性に偏っているようだ。ところが海外で稲垣次郎や鈴木弘などを熱心に聴いている人たちはどうも20代がメインらしい。マイルス、コルトレーン、ブルーノートでは味わえない、世界の若者を魅了する和ジャズならではの魅力とはなんなのか?

 それは一つには、ジャンルを超えたミクスチャー感覚にあるように思う。稲垣次郎は、1970年にジャズとロックを大胆に融合した『ヘッド・ロック』を、その5年後にはファンクをセンス良く取り入れた『ファンキー・スタッフ』をリリースした。ジャンル内に収まらない音楽はすぐには理解されにくく、後年にその良さが再発見されたときには必然的に“レア盤”となる。

 そしてもう一つの和ジャズの魅力はアレンジャーの存在にある。本場アメリカの模倣から脱するべく民謡を取り上げたり、和楽器を取り入れたりといった作品では特にアレンジャーの役割は大きい。一般的にジャズといえばプレイヤーに光があたり、その丁々発止を楽しむ音楽というイメージがあると思うが、60~70年代の日本のジャズでは鈴木宏昌、前田憲男、山屋清などのアレンジャーがそのサウンドの肝となっている。アレンジャーに注目してみると、さらに和ジャズの楽しみが深まるだろう。

<私が好きな和ジャズの名盤3枚>





遠藤亮輔 (えんどう・りょうすけ)
●日本コロムビアのプロデューサー。2012年よりカタログコンテンツを活用したリイシューやコンピレーションの制作に従事。近年では海外レーベルとのコラボレーションや、レーベルのカタログコンテンツを海外に発信するJ-DIGSの運営にも力を入れている。
https://columbia.jp/j-digs/