2024年9月号|特集 90年代シティポップ

⑰ 比屋定篤子『ささやかれた夢の話』|90年代シティポップ名盤ガイド

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レビュー

2024.9.26


比屋定篤子
『ささやかれた夢の話』

1999年2月20日発売

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1.まわれ まわれ
2.雲がふたをしてしまう前に
3.ささやかれた夢の話
4.光のダンス
5.私
6.夏の日
7.メビウス
8.眠り
9.うつらつら
10.Gato
11.おしゃべりな雨音
12.Sweet Rhapsody
13.青い自転車



くつろいだムードのなかに光る所作の美しさに耳が奪われる比屋定篤子の2作目


 1997年にデビューした比屋定篤子の2作目。作詞はすべて比屋定のペンによるもので、作曲はデビュー前からの音楽的パートナーである小林治郎が受け持っている。

 『ささやかれた夢の話』のサウンドには、ブラジルのMPBやミナス派、60年代のサイケやソフトロック、70年代のソウル、フレンチポップスなどのような古めかしい音楽の香りが漂っているものの、仕上がりは至ってモダンである。その意味で、ステレオラブの取り組みとも遠くで響き合っていたと言えるのではないかと思う。特に「メビウス」の和声とグルーヴは、まさにステレオラブ『ミルキー・ナイト』に通ずる陶酔感を湛えている。

文/鳥居真道