2024年9月号|特集 90年代シティポップ

【Part3】小松秀行が語る90年代シティポップ

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インタビュー

2024.9.27

インタビュー・文/長井英治 写真/山本佳代子


【Part2】からの続き)

自分がこうしたらもっとカッコよくなるだろうということを、遠慮なくやらせてもらっただけ


── 古内東子さんのアルバム『魔法の手』は小松さんのハンドリングにより、海外で制作されたわけですが、ドラムにマイケル・ホワイト、ポール・ハンフリー、ギターにポール・ジャクソン・ジュニア、デイヴィッド・T・ウォーカーなど、ここには書ききれないくらい著名なミュージシャンが参加されていますね。

小松秀行 豪華ミュージシャンが参加していますが、デモを聴いてその場でサウンドを作り上げていく作業は、日本の制作とさほど大きな差はないんですよ。ただ、衝撃的だったのはミックス作業ですね。エンジニアがレイ・バーディニという人だったんですが、作業の細かさにとにかく驚きました。当時、外国人スタッフは作業が雑なんて言われていましたけど、本当に作業がきめ細かくて感動したことは今でもよく覚えています。



古内東子
『魔法の手』

1998年8月19日発売


── 潤沢に予算があった90年代ならではの、夢のような制作のお話ですね。

小松秀行 後から聞いた話なのでもう時効だと思いますが、このアルバムに関しては予算を使いすぎて、担当ディレクターが始末書を書かされたらしいです(笑)。

── アルバム『魔法の手』は古内さんのキャリアで初の1位を獲得したので、制作費をかけただけの結果が出せたので良かったのではないでしょうか(笑)。小松さんがアレンジを手がけた『恋』『魔法の手』は古内さんのキャリアの中で大きな売り上げになりましたが、商業的に結果を出して、達成感のようなものはありましたか。

小松秀行 器用なことを出来るタイプではないので、自分が恰好いいと思うことをやってきた結果だと思います。それはOriginal Loveの頃から現在まであまり変わってないかもしれません。

── 今月の特集が「90年代シティポップ」で、この企画のきっかけになったのが栗本斉さんの監修したコンピレーションアルバム『CITY POP GROOVY ’90s -Girls & Boys-』です。このアルバムには小松さんがアレンジした古内東子さんの「いつかきっと」と平岩英子さんの「昨日見た夢のように」が収録されていますが、平岩英子さんの曲は、90年代シティポップの再評価で人気がありますね。

小松秀行 この2曲が『CITY POP GROOVY ’90s -Girls & Boys-』に収録されていて驚きましたが、よく見てみたら、もう一曲、真心ブラザーズの「ENDLESS SUMMER NUDE」のベースも自分が弾いていました(笑)。



真心ブラザーズ
「ENDLESS SUMMER NUDE」

1997年7月21日発売


── 「ENDLESS SUMMER NUDE」のグルーヴ感は最高ですよね、90年代のソウルフルでグルーヴィーな楽曲に小松さんの影が見え隠れしていますが、小松さんのソウル、ファンク的なベースはあの時代に意識して弾いていたんでしょうか。

小松秀行 あの頃もデモがあったりなかったりしたと思いますが、「これくらいだったら弾いてもいいだろう」的に判断してプレイしていました。当時はモーニング娘。のCDでもベースを弾いていましたから(笑)。




●小松秀行 (こまつ・ひでゆき)
1969年生まれ、東京都出身。’93年にOriginal Loveにベーシストとして加入し、プロのミュージシャンとして活動を開始。’96年の脱退後は、古内東子のサウンド・プロデューサーとして、一連の作品を手掛ける。その後も、セッション・ベーシスト、アレンジャー、プロデューサーとして幅広く活躍。鈴木雅之、SAKURA、SILVA、Chemistry、Skoop On Somebody、杏里、Rakeなど多数のアーティストのサポートやプロデュースを手掛けている。2015年にはソロ・アルバム『Breezin'』を発表した。