2024年9月号|特集 90年代シティポップ

⑬The Chang『ACTON』|90年代シティポップ名盤ガイド

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レビュー

2024.9.19


The Chang
『ACTON』

1996年7月21日発売

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1.ジェットコースター
2.Round and Round
3.君の恋人によろしく
4.休日
5.日曜日だけ咲く花
6.うわさ
7.孤独のハイウェイ
8.ヒコーキ
9.ワナかも
10.Woo-Sha-Sha
11. 意味のないもの
12. Second Song
13. TOP GEAR



ベック『オディレイ』以降のヒップホップを通過したアーシーなサウンドにアプローチ


 もしバブル景気の崩壊と共に音楽業界も不況になっていったら、この“90年代シティポップ”の特集は成立しなかっただろうし、特集の元になるコンピレーション『CITY POP GROOVY ’90s -Girls & Boys-』の収録曲も大きく変わっていただろう。不景気まっしぐらの世間とは対照的に音楽業界は好景気に沸いており、’98年にピークを迎えるCDバブルによって、各レコード会社は潤っていた時期であった。自分も’96年から業界の末席に控えていたのでその浮かれた空気を肌で感じていたのと同時に、洋楽を背景に持つポップ・ミュージックがいわゆる渋谷系の系譜とはまた別のラインで存在感を放ち始めていたのも記憶として鮮烈に残っている。ヒットチャートの上位を狙った売れ線の音楽だけでなく、洋楽リスナーの耳目を集めるようなアーティストがこの時期多く登場したのはレコード会社に余裕があったからだろう。この石井マサユキ率いるThe Changもそんなバンドのひとつとして数えられる。

文/油納将志