2024年9月号|特集 90年代シティポップ

【Part3】橋本徹(SUBURBIA)×栗本斉:Free Soulとシティポップの相関関係

会員限定

対談

2024.9.17

インタビュー・文/真鍋新一 写真/山本マオ

取材協力/Café Après-midi


【Part2】からの続き)

様々なパースペクティヴで編まれたコンピレーションが、好きな音楽と出会えるチャンス


栗本斉 時代が変わって、今。ここ10年ぐらいブームというか、もうシティポップというものが定着した感もあると思うんですけれども、そのあたりについて、橋本さんはどういう見方をされていたんですか?

橋本徹 実はその件に関しては、今までも取材の依頼とかがいくつかあったんだけど、僕自身としてはコメントを避けるようにしていたというのが正直なところで。というのは、今回初めてこんな話を公の場でしているけど、最初に栗本くんが話したように、シティポップにはハッキリした定義があるわけではないし、少なくとも自分がネーミングした言葉でもない、というところがあって。だから、簡単に言えば自分は外野だからなぁ……と思っていたというか。とはいえ何か語ればやっぱり言葉に重みが出てきちゃうじゃないですか(笑)。だったらもう一切しゃべらないようにしよう、と。ただ、自分が見てきたシーンや光景なら話せるし、時代の移り変わりと、シティポップ・ブームの一般化のなかで定説になっているようなことと、僕が実際に見てきたことのズレとかは正直、気になることもあって、何か言いたくなることはけっこうあったんですけどね(笑)。でも老害みたいになるのは野暮だし、ブームはそれを楽しめる世代で、楽しめるリスナーが担っていけばいいことだから。



栗本斉 それは本当に、そうだと思います。そういう気持ちもよくわかります。

橋本徹 今回は栗本くんが選曲したコンピが出て、『Free Soul』も30周年ということで、いわゆるシティポップがこの10年ぐらいで人気が出てきた流れのなかで、「僕らのシーンでは90年代半ばにこういう曲がかかっていて、きっとそれがシティポップ・リバイバルの礎になったんだよ」っていう話はできるかなと思って。シティポップ・ブームの解説にはあまり出てこないけれど、現場の感覚だと、それこそ竹内まりやの「プラスティック・ラブ」もそうだけど、『Free Soul Underground』で、特に大貫妙子の「都会」とか、普通に毎月かかっていたよねって話で。松原みきの「真夜中のドア」もそのリファレンス元のキャロル・ベイヤー・セイガー「It's The Falling In Love」を『Free Soul Garden』に入れた1996年初めくらいから、よくかかるようになって。そういう話はほら、いまはインターネット上に残ってないと、なかったことになってしまったりするから(笑)。 


V.A.
『Free Soul Garden』

1996年1月25日発売


栗本斉 そうですね(笑)。




橋本徹 (はしもと・とおる)
●編集者/選曲家/DJ/プロデューサー。サバービア・ファクトリー主宰。渋谷の「カフェ・アプレミディ」「アプレミディ・セレソン」店主。『Free Soul』『Mellow Beats』『Cafe Apres-midi』『Jazz Supreme』『音楽のある風景』シリーズなど、選曲を手がけたコンピCDは350枚を越え世界一。USENでは音楽放送チャンネル「usen for Cafe Apres-midi」「usen for Free Soul」を監修・制作、1990年代から日本の都市型音楽シーンに多大なる影響力を持つ。最近はメロウ・チルアウトをテーマにした『Good Mellows』シリーズや、香りと音楽のマリアージュをテーマにした『Incense Music』シリーズが国内・海外で大好評を博している。
http://apres-midi.biz/

V.A.
『Legendary Free Soul SUPREME』

2024年8月7日発売


『Legendary Free Soul PREMIUM』
2024年8月7日発売

[橋本徹×高橋晋一郎のフリー・ソウル30周年記念対談 ]
https://note.com/smjintermusic/n/n008cb30cb880



栗本斉 (くりもと・ひとし)
●音楽と旅のライター、選曲家。2022年2月に上梓した『「シティポップの基本」がこの100枚でわかる!』(星海社新書)が話題を呼び、NTV『世界一受けたい授業』を始めテレビやラジオなど各種メディアにも出演。コンピレーション・アルバムの企画、レコードジャケット展示の監修、トークイベントの出演なども行う。2023年9月に発表した『「90年代J-POPの基本」がこの100枚でわかる!』(星海社新書)が好評発売中。昨年ロングセールスを記録したシティポップの王道コンピレーション・アルバム『CITY POP STORY -Urban & Ocean-』に続き、今年8月に90年代のシティポップをコンパイルしたCDとLP『CITY POP GROOVY ’90s -Girls & Boys-』を企画選曲。
https://lit.link/hkurimoto