2024年9月号|特集 90年代シティポップ

⑥ICE『WAKE UP EVERYBODY』|90年代シティポップ名盤ガイド

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レビュー

2024.9.9


ICE
『WAKE UP EVERYBODY』

1994年1月24日発売

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1. 夢で逢いましょう
2. わかるはずなのに
3. 仲良く暮らそう
4. 粉雪のワルツ
5. 電話でデート
6. ショートカット大作戦
7. 嘘みたい
8. 雨上がりの魔法
9. 屋根の上で1.KM JAM#2(Clap Your Hands,Stomp Your Feet)
2.JUNKFOOD JENNY
3.MELLOW BLUE
4.E・S・P
5.ANALOG QUEEN
6.TEA 4 TEE
7.FLOWER
8.BLACK SUGAR DREAM
9.MOON CHILD
10.ANGEL
11.WAKE UP EVERYBODY
12.SLOW LOVE
13.TEA 4 TEE(this guitar mix)


レア・グルーヴ的な感性を前面に押し出したソウルフルなサウンド


 ギタリストの宮内和之とボーカルの国岡真由美によって結成されたユニット、ICEのセカンドアルバム。シングルカットされた「MOON CHILD」に全国のFM局からリクエストが殺到するなど、ICEの名前を広く知らしめた一枚だ。レア・グルーヴ的な感性を前面に押し出したソウルフルなサウンドは、リリースから30年が経った現在も全く古びていない。

 この当時、ICEは抜きん出ててカッコいい存在だった。それは単に楽曲のクオリティが高いというだけでなく、彼らが生み出す独特の空気感にあった。外資系メガストアからヒットしたという経緯もあって「渋谷系」にカテゴライズされることもあったが、実のところ人脈的な繋がりはほとんどない。熱く粘りつくような宮内のギターカッティングに、シルキーな国岡のボーカルが乗ることで生み出される扇情的なサウンドは間違いなくオリジナルなものであり、本物の「黒さ」への追求があった。「ソウルフルな女性ボーカルと、それをサウンド面で全体的に支えるプロデューサー」という構図でいえば、superflyを15年近く先取りしていたようにも思う。

文/加藤賢