2024年8月号|特集 アルファの夏!

【Part3】MUROが選ぶDJ目線で再評価したいアルファの名曲

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インタビュー

2024.8.28

インタビュー・文/柴崎祐二 写真/山本マオ


【Part2】からの続き)

まだまだ掘り切れてない部分ありそうなので、引き続き探求していきたい


── アルファの大きな柱としてはYMOや各メンバーのソロ作品の存在も大きいと思うんですが、その辺りのテクノポップ系のレコードはいかがですか?

MURO 第一回目で話した通り、小学生の頃にYMOの曲が次々ヒットしていたので、自然と耳にはしていました。メンバーのソロ作だと、細野(晴臣)さんのゲーム音楽のレコード『VIDEO GAME MUSIC』(’84年)も大好きでしたね。ビデオゲーム全般が子ども達の間で流行っていましたからね、当時は。


細野晴臣
『VIDEO GAME MUSIC』

1984年4月25日発売


── 後にゲーム音楽專門のGMOレーベルがアルファ内に設立されるなど、改めてそのカタログの幅広さをに驚かされますね。

MURO コメディ系、たとえばスネークマン・ショーはもちろん、タモリさんの初期作品もアルファですもんね。あとは、スーパー・エキセントリック・シアターの『The Art Of Nipponomics』(’84年)とかも懐かしい。当時、これで三宅裕司さんの存在を知りました。


スーパー・エキセントリック・シアター
『The Art Of Nipponomics』

1984年発売


── 第一回目で話されていた通り、少年時代のMUROさんにとって、実家の直ぐそばの映画館で1970年代の日本映画を沢山見た経験が大きかったということですが、それでいうと、アルファ創設者の村井邦彦さんも当時の映画音楽をいくつか手掛けていますよね。

MURO 『悪魔の手毬唄』(’77年)とか、本当に素晴らしいですよね。「山狩り」っていう曲とか、ビートは入っていないのにグルーヴがとても気持ちよくて大好きです。他にも、『野獣狩り』(’73年)のスコアは、『KING OF DIGGIN’ ~DIGGIN’ OST~ やさぐれファンク番外地編』(’10年)っていう自分のミックスに収録させてもらっていますし、サントラに限らず、作曲クレジットに村井さんの名前を見かけたらもれなくチェックするようにしています。


V.A.
『KING OF DIGGIN’ ~DIGGIN’ OST~ やさぐれファンク番外地編

2010年1月13日発売


── ビジネスマンであり、同時に芸術家でもあったわけで、1985年に村井さんが退社されるまでのアルファのカタログを眺めていると、やっぱり一貫した美学があるように思います。サウンドはもちろん、ジャケットをはじめとしたアートワークも。

MURO 全てにおいて洗練されていますよね。

── クオリティのコントロールも相当シビアだったようですからね。それこそ、今回ようやく初リリースとなったリンダ・キャリエールのお蔵入りアルバム『リンダ・キャリエール』(’77年)にしても、今の耳で聴くと、なんでこれがリリースされなかったんだろうって思いますけど、やはりそこには並々ならぬこだわりやシビアな判断もあったんだろうなと感じます。

MURO 本当ですね。リンダ・キャリエールの名前についてはチラッと聞いたことがあったくらいだったんですが、まさかそんなアルバムがあったなんて知らなくて。山下達郎さんもコメントでおっしゃっていましたけど、ソーラーレコードの有名なグループ、ダイナスティのメンバーと同一人物と知って、すごく驚きました。



リンダ・キャリエール
『リンダ・キャリエール』

1977年録音/2024年発売



── アルバムはもう聴かれましたか?

MURO 実はまだ聴けていなくて。スゴいという評判は耳にしているんですけど、アナログ盤を手に入れたら聴こうと思って楽しみにしています(笑)。達郎さんにしても、佐藤博さんにしても、このアルバムのために描き下ろした曲を後に自分で取り上げているんですもんね。そう考えると、ものすごく贅を尽くしたレコードですよね。

── その一方で、1980年代後半以降の村井さんが退職されたあとのアルファにも当然ながらいいカタログがたくさんあるんですよね。

MURO なるほど、その辺りはCDの時代ですよね。そうなると僕は全然わからないなあ。

── 佐藤博さんみたいに継続して傑作を出し続けた人たちもいるし、山本達彦さんや斎藤誠さんのように他のレーベルから移ってきていい作品を残している人もいるんです。他にも、例えば小田育宏さんのように、1990年代当時のアルファから新しくデビューするアーティストの中にも、最高のジャパニーズAORを歌っている人がいたり……。

MURO へえ〜! 面白いですねえ。気になるな。

── 最近は和モノだとどのあたりを掘ってらっしゃるんでしょうか?




MURO (ムロ)

日本が世界に誇るKing Of Diggin'ことMURO。「世界一のDigger」としてプロデュース/DJでの活動の幅をアンダーグラウンドからメジャーまで、そしてワールドワイドに広げていく。現在もレーベルオフィシャルMIXを数多くリリースし、国内外において絶大な支持を得ている。
DJ NORIとの7インチオンリーでのDJユニット“CAPTAIN VINYL”含めて、多岐に渡るフィールドで最もその動向が注目されているアーティストである。

毎週水曜日21:00~ TOKYO FM MURO presents「KING OF DIGGIN'」の中で、毎週新たなMIXを披露している。
番組HP https://www.tfm.co.jp/kod/

https://tokyorecords.com/members/muro/
https://www.instagram.com/dj_muro/
https://x.com/djmuro