2024年8月号|特集 アルファの夏!

【Part3】クニモンド瀧口(RYUSENKEI)がこの夏聴きたいアルファの名曲

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インタビュー

2024.8.19

インタビュー・文/金澤寿和 写真/島田香


【Part2】からの続き)

ブームだからコレをやっているんじゃなく、ずっと長く聴いてもらえるモノを作っている


── 今回、流線形がアルファでやることになった経緯は?

クニモンド瀧口 僕が手掛けているコンピレーションのシリーズ『CITY MUSIC TOKYO』のソニー編を作っていて、マスタリングの時に担当ディレクターから「次の流線形はどうするんですか?」と訊かれて。堀込泰行さんをヴォーカルにフィーチャーした『インコンプリート』というアルバムを出した後、実は漠然と「次は自主制作でやろうかな」と考えていたんです。資金はクラウドファンディングで集めてね。そうしたら「一度ソニーで出しませんか?」というお話を頂いて。

── オォ、それはいきなり…。

クニモンド瀧口 でも僕は自由な環境でやりたいと思っていたので、最初は躊躇したんですよ。けれど本当にソニーさんで出せるなら、と思って、ダメ元で「アルファミュージックとかAIRレコードの名前を使えませんか?」って提案したんです。アルファは今日話しているみたいに好きな作品がたくさんありますし、AIRは山下達郎さんや角松敏生さんがいたレーベルですから。一番意識したのは、アシッドジャズのPLATINUM 900が90年代に出したアルバム。あれがAIR レコードでした。そういうブランド力を利用できたら面白いし、自分も嬉しいので。



PLATINUM 900
『フリー(アット・ラスト)』

1999年7月23日発売



── それがあっさり実現した…

クニモンド瀧口 タイミングが良かったんです。そのディレクターが、アルファミュージック55周年のプロジェクトにも関わることになったばかりで、「じゃあトップに話してみます」といろいろ動いていただいて。

── 持っていますねェ〜。

クニモンド瀧口 でもその時点では、カタログ事業は積極的に押し進めることになっていたようですけど、新人や新譜制作までは考えてなかったらしく……。だけど今これだけのシティポップ・ブームが来ているので、そういうのをやったら相乗効果が生まれるんじゃないか、と。

── さすが、プロデューサー目線ですね。

クニモンド瀧口 それに僕自身、ちょうど海外にも目を向け始めたところでした。もし海外進出するなら、アルファはキーワードになる、と考えたんです。そうしたらホントにOKが出て、「新生アルファの第一弾は流線形」と言われて。逆にこっちがビックリしました。

── 弾みで言ったことがタナボタで実現してしまった……。

クニモンド瀧口 まさにその通りです。僕自身ちょうど長く勤めていた会社を辞めた直後で。それまでは働きながら音楽活動をしていましたから、勤めながらじゃできなかった。しかもアルファ55周年、自分もちょうど55歳で。そういう偶然がいくつも重なったんです。

── きっと転機だったんでしょうね。

クニモンド瀧口 そうですね。でも最初はヴォーカルもなかなか決まらなかったんですよ。Sincereもすでに事務所やレコード会社との契約があって。それこそ「もう1、2週間待って前向きな返事が来なかったら、別のシンガーを探すしかない」というトコロまで追い込まれました。だからクリアになった時は、正直ホッとしましたよ。Sincereが決まって、英語詞にチャレジして、表記を“流線形”からローマ字の“RYUSENKEI”に変えて。



── アルファにして良かった点は?

クニモンド瀧口 もちろんいろいろありますが、個人的には、やっぱりこの赤いロゴ。これがジャケットに入れられたのは、僕にとってものすごく大きな意味があるんです。大きな影響を受けたYMOで大ブレイクしたブランドから太鼓判を押してもらった、そういう感動がありました。一方でアルファの看板を背負うことになり、音もそれに恥じないモノにしなくちゃ、今までよりワンランクもツーランクもレベルアップしなくちゃ、そういうモチベーションになりました。それでバンド・メンバーも刷新しましたし、ジャケットも撮り直ししたりして、とことんクオリティにこだわったんです。

── ジャケット、撮り直ししたんですか?

クニモンド瀧口 ハイ、一度撮影したんですが、「アルファでコレはナイなぁ〜」と思って、「もっとアルファに相応しいもの」と考え、ギリギリのタイミングで撮影し直してもらいました。

── 最初にCDを見た時から、透明感を感じてとても良いなあ、と思ったけれど、アナログ盤を手にした時のインパクトが強力でした。

クニモンド瀧口 ありがとうございます。まぁ、佐藤博さん『AWAKENING』には届かなかったけれど、その路線を踏襲しつつ、ブレッド&バター風の雰囲気や日向(大介)さんっぽい色合いも絡めてみました。

── 演奏陣を変えたのは何故? インディからアルファ/ソニーに移籍して、制作費も多少上がったんでしょうけど……。




クニモンド瀧口 (くにもんど・たきぐち)

RYUSENKEI / CMT Production。2001年に流線形として音楽活動をスタート。近年の世界的なシティポップ・リバイバルの流れで、アルバム『TOKYO SNIPER』が海外から注目される。現在はRYUSENKEIに改名してアルファミュージックから『イリュージョン』をリリース。また、選曲・監修したコンピレーション・アルバム『City Music Tokyo』シリーズを展開。CMT Productionとして、グラフィックデザイン、ブランディングなど、音楽を中心に多岐に渡り活動している。

https://linktr.ee/ryusenkei


RYUSENKEI Billboard Live 2024 〜ILLUSIONS〜
日時:2024/09/19 (木)
場所:Billboard Live TOKYO
https://www.billboard-live.com/tokyo/show?event_id=ev-20031